Saturday, 19 April 2008

セゼール

カリブ海マルチニックの詩人・政治家エメ・セゼールが17日亡くなった。94歳。20世紀フランス語の、もっとも偉大な詩人のひとりだった。

ぼくの日本の大学での初仕事は1999年夏、東大駒場での「カリブ海文学」集中講義。初日の夕方、授業を終えて出るとどしゃ降りで、どしゃ降りの中で江藤淳の自殺が報じられていた。

その集中講義で輪読したのがセゼールの代表作Cahier d'un retour au pays natal(「故郷への帰還の手帖」)だ。読んでは解説しながら、自分の目の前にその場で風景と歴史が開けてゆくような、すごい経験だった。

そのとき出席してくれた人の中で、工藤晋や中村隆之とはいまでもよく会っている。でもそれがもう9年前の話。人生は恐ろしく短い。

セゼール詩集の翻訳をいつか出したいとも思うが、まずはその教え子グリッサンの小説を。そして何年も前から予告している「セゼール、ファノン、グリッサン」を、今後数年のうちに書いてみたい。