Monday 30 September 2024

「土地と土地をむすぶ詩」

 岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲にあるおしゃれなカフェが縁舎。ここの連続企画「寺小屋シネマ」の第23回として、9月22日、新井高子さんとぼくの対談・朗読会を開いていただきました。題して「土地と土地をむすぶ詩」。大阪の国立民族学博物館ではじまったばかりの特別展「吟遊詩人の世界」を見た翌日。すっかり頭の中が吟遊詩人化したわれわれの、熱に浮かされたような声の午後になりました。縁舎の川瀬富士美さん、「吟遊詩人の世界」をまとめあげた映像人類学社の川瀬慈さん、音響を担当してくださったIAMASの前林明次さんに、心から感謝します。

縁舎は大垣から樽見鉄道に乗って「谷汲」駅下車、徒歩15分。これからも数々のイベントが開催されるはず。ちょっとした遠足のつもりで、ぜひどうぞ。おいしい料理と最高の雰囲気を味わうことができます。10月5日には、ドリアン助川さんとサックス奏者の仲野麻紀さんの朗読・演奏会が開催されます。

吉江淳『出口の町』に

 吉江淳さんのすばらしい写真集『出口の町』が、平野篤史さんの装幀により刊行されました。ふげん社より。カバーの色は2種類あり、あきれるばかりのかっこよさです。ぼくは「さあ、 EXITだ、そこで下りて行け」という短い文章を寄稿しました。これはもっていて損がない1冊。というより川を、川岸を必要としている人には、必携の書でしょう。おすすめします!

『積ん読の本』に

 書評家・石井千湖さんによる「積ん読名人12人」に対するインタビュー集が『積ん読の本』(主婦と生活社)。柴崎友香さん、しまおまほさん、山本貴光さんらとともに、ぼくもインタビューを受けました。研究室の混沌、初公開! 楽しい本なので、ぜひご覧ください。得るもの、かなりあるはずです。

Thursday 19 September 2024

砂連尾理さんと踊る

 山形ビエンナーレ2024の参加作家のひとりが、舞踏家の砂連尾理さん。この春以来すすめられてきた彼のダンス・ワークショップの仕上げは蔵王温泉の町を踊りつつ歩くパレードだったのですが、そのパレードの終着点、蔵王スキー場ゲレンデで、詩を朗読しました。7日(土)と8日(日)の2回。特に日曜は、詩に登場する「姿を見せないかもしか」に成り代わって砂連尾さんが即興で踊り、詩を読み終えてからそれに気づいたぼくも即興で加わって、なんと砂連尾さんとのデュオ舞踊となりました。これをもって勝手にダンサーとしてデビュー?

砂連尾さん、すばらしい機会をありがとうございました! そして朗読の伴奏をおねがいした中村大史さん(土曜日)、かわぐちシンゴさん(日曜日)、すばらしい音楽をありがとうございました!

平家物語の世界へ

 河合宏樹監督の音楽・読経ライヴ映画『平家物語 諸行無常セッション』が新宿のK's Cinemaで公開されたのを機に、その「副読本」と題された風変わりなパンフにエッセーを寄稿しました。題名は「慰霊、物語の移住、飛び散る島々」。2019年に高知の竹林寺で開催された、古川日出男、坂田明、向井秀徳による平家物語セッションを追った強烈なフィルムです。

これに合わせて9月9日、同映画上映後に安東嵩史さんと対談しました。安東さんは同「副読本」の編集も担当。なぜ日本の各地に平家の落人伝説があるのかをめぐって、いろいろな話が飛び交いました。この主題、今後も考えていきたいと思ってます。

山形ビエンナーレ2024

9月1日〜16日まで開催された山形ビエンナーレ2024「ひとひのうた」に参加しました。ぼくは16行詩7篇を出展。いずれも平野篤史さんのすばらしいデザインにより、1点ごとに工夫された巨大な作となりました。

特に蔵王体育館では光を透過するカーテンに3点、遮光カーテンに1点、壁に2点が展示され、おなじ空間にある浅野友理子さんの絵、春原直人さんの絵、大和由佳さんの映像作品との共鳴もすばらしく、感動的な出来映え。

ごらんいただいたみなさま、ありがとうございました。この画期的な展覧会にお誘いいただいたキュレーターの小金沢智さん、そして関係者のみなさま、ほんとうにありがとうございました!

Monday 26 August 2024

レクチャー「詩と歩くこと」

 今年の山形ビエンナーレは、その準備段階としていくつかのワークショップが実施されています。ぼくが関わっているのは「キュレーションのマテリアル 歩行・言葉・映像」という講座。10人の受講生が全4回のワークショップを経験しつつ、それぞれの作品を制作しています。

その最初の回、いろいろな分野のアーティストである受講生のみなさんを対象にしたぼくのレクチャーのダイジェスト版が公開されました。撮影・編集は岡安賢一さん。詩に興味がある方は、ぜひごらんください!

https://www.youtube.com/watch?v=-A-Dzd2jYQo


Saturday 10 August 2024

「朝日新聞」2024年8月7日

 大岡信賞選考委員5名によるリレー連載「うたをつないで」も3順目。「蔵王の山 茂吉の<けだもの>」と題する小文を寄稿しました。9月1日に蔵王温泉で開幕する山形ビエンナーレ2024にも関連した内容です。みなさん、ぜひ山形にいらしてください!

Saturday 3 August 2024

「日本経済新聞」2024年8月3日

 本日の「日本経済新聞」に鷲巣力『林達夫のドラマトゥルギー』(平凡社)の書評を寄稿しました。著者は林達夫・久野収『思想のドラマトゥルギー』の担当編集者だった人。ぼくは高3のとき(1976年)にこの本を京都・鴨川べりで読み、大きな影響をうけました。

明治大学図書館生田保存書庫には林達夫の旧蔵書があります。明治での、あと4年半の勤務期間中に、もう少し丁寧に調べておきたいと思っています。

Monday 29 July 2024

「現代詩手帖」2024年8月号

 「現代詩手帖」8月号に「詩の動物について」という短いエッセーを寄稿しました。詩に、動物はどのように現れうるのか。ぜひ読んでみてください。大部分、ジャカルタ空港で書きました。山頭火論にもなってます。

Friday 19 July 2024

「キネマ旬報」2024年8月号

 「キネマ旬報」8月号、発売。おりしもはじまったばかりの台湾巨匠傑作選2024で上映される、王童(わん・とん)の3部作『村と爆弾』『バナナ・パラダイス』『無言の丘』を論じる文章を寄稿しました。ぜひお読みください、というより、この3本をごらんになることを熱烈におすすめします!

Friday 21 June 2024

「週刊読書人」2024年6月21日号

 夏至おめでとうございます。本日発売の「週刊読書人」に阪本佳郎『シュテファン・バチウ』(コトニ社)の書評を書きました。2000字なので、そこそこ内容のあることが書けました。この本がいかに(ぼくにとっても)特別な本であるか、その所以を記したつもりです。外国文学研究をやるなら、これくらいの情熱をもってやりたい、というお手本のような著作。ぜひごらんください。

Friday 7 June 2024

「すばる」2024年7月号

 「すばる」7月号、発売。『センス・オブ・ワンダー』の書評を寄稿しました。レイチェル・カーソンの原著を森田真生が翻訳し、さらに自分自身と幼い息子たちの生活をめぐる長いエッセーをつけた、おもしろい構成の本。こうして心と志が受け継がれていくのかな。特に小さなお子さんがいらっしゃる方、おすすめします。

Saturday 1 June 2024

『ウォールデン』新訳解説

角川文庫の6月の新刊、ソロー『ウォールデン』の田内志文 さんによる新訳。ぼくは解説を書きました。非常に読みやすい訳文です。ソローはいまもわれわれにとっての灯火。ぜひ読んでみてください。

Tuesday 28 May 2024

「現代詩手帖」2024年6月号

 「現代詩手帖」の6月号に「開拓時代」という66行の詩を掲載していただきました。17世紀、北アメリカにおけるスペイン人征服者たち、19世紀のアメリカ西部における東部からの移住者たち、そして1948年以後のパレスチナにおけるイスラエルのふるまいをめぐる作品です。ぜひごらんください!

Monday 27 May 2024

「産経新聞」2024年5月26日

 「産経新聞」にル・クレジオ『ブルターニュの歌』(中地義和訳、作品社)の書評を書きました。真にプラネタリーな作家の秘密をにぎる少年時代の思い出。感動的なエピソードが続きます。まずはぜひ、この書評をお読みください。

https://www.sankei.com/article/20240526-A6AL25QJKRPPDBZHIJXHFIYWME/?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTEAAR2b6RARnU3mSatqW88dw9TQVSl09zi5Ek9Zkkq-aTLZviZQgaCDlVsgY28_aem_ATyUlHCnlyWx6dPNYNgF0ggTKdQqHt3QLLKBFma43sydnRbaGp-wsRNs0vxmtrcdX-hRgEsrujgtgjfKUNQRlqKL

Friday 19 April 2024

「陰と陽」10号(2024年4月9日)

 写真誌「陰と陽」第10号に長めの詩「しまこ」を寄稿しました。わかる人にはすぐピンとくる、浦島子伝説に基づく詩。3月12日の巻上公一さんイベントで、松丸契さんのサックスとともに朗読した作品です。またどこかでやりたいもの。

Monday 19 February 2024

「読売新聞」2024年2月19日

 本日の読売新聞に「読売文学賞75回を迎えて」と題する、松浦寿輝さんとぼくとの特別対談が掲載されています。6部門を擁する、文学にとってもっとも重要な賞といっても過言ではないでしょう。創造を励ますためには。ぜひお読みください。

Sunday 14 January 2024

Water Schools 英訳

 明治大学文学部のAlex Watson さんがエジンバラ大学のFabiemn Arribert-Narce さんと共編した論文集 Intermedial Encounters Between Image, Music and Text (Peter Lang) が刊行されました。ぼくは論文ではなく自作の詩 Water Schools を掲載していただきました。ごらんいただければさいわいです!

「すばる」2024年2月号

 文芸誌「すばる」2月号に、昨年6月に青山ブックセンター本店でおこなった堀江敏幸さんとの対談記録「本の島をわたってゆく旅」を掲載していただきました。文学について、書評について、かなり本質をついた議論をしています。十分なページ数をくださった編集部に、心から感謝します。ぜひお読みいただければさいわいです!

安藤昌益をめぐって

1月7日、八戸で安藤昌益をめぐるシンポジウムが開催されました。八戸ブックセンターほかが主催。八戸で町医者として活躍した思想家・安藤昌益について。まず、ぼくが一昨年書いたふたり朗読劇「ヘンリと昌益」を上演。昌益役は作家の木村友祐さんで、せりふをすべて南部弁に書き換えて演じてくれました。 

ついで第2部として、社会学者の山内明美さん(宮城教育大学)を加えて鼎談。この3人の顔合わせは2014年におなじ八戸のSlow Baseで開催した鼎談(記録は文芸誌「すばる」に収録)以来、10年ぶりです。鼎談の最後に、やはり安藤昌益を主題とした一人芝居を演じる(=8日に上演)地元の代表的演劇人・柾谷伸夫さんに加わっていただき4人でいろいろな話題にふれることができました。

ぼくとしては安藤昌益の思想を19世紀アメリカの思想家ヘンリー・デヴィッド・ソローとむすびつけたこと、またかつて八戸藩を襲った猪飢饉をかつてのアイルランドのじゃがいも飢饉と並べて考えたことに(いずれも人間社会のシステムの問題)意義があったかと思っています。

安藤昌益の独自の思想については、これからも考えていきたいと思っています。5年後(?)には、また八戸で!



環境人文学をめぐる鼎談

 12月22日、青山学院大学の結城正美さん(環境文学)の授業の枠で、結城さん、奥野克巳さん(文化人類学)との鼎談をおこないました。この春から発足する、青山学院+立教+明治の3大学院共同「環境人文学」プログラムがめざすものについて語り合う、貴重な機会となりました。

3大学のいずれかに所属しつつ、他大学の授業も必要単位に加算できる仕組みです。大学院進学を考えているみなさん、ぜひ検討してみてください!

伴田良輔さんとの対談

 12月21日、美術家・伴田良輔さんの新作映画『道 Passacaglia』の上映後トークのお相手を勤めました。すみずみまで驚くべき美的感覚がゆきとどいた傑作。大部分の人が思う「映画」に、まったく似ていません。それでいて、どこか帰ってゆくべき場所があることを思い出させてくれる作品。渡り鳥のジョビちゃんをはじめ、自然力の介入に打たれます。機会があればぜひ、どこかでごらんください。