雑誌「考える人」の第24号は「海外の長篇小説ベスト100」特集。129名の人たちの投票から、100作品がリストに選ばれた。ぼくも回答を寄せている(77ページ)。
堂々第1位に選ばれたのはガブリエル・ガルシア・マルケスの『百年の孤独』。ぱちぱちぱち。
こうしたランキングは、もちろん較べようのないものを較べ、順位などありえないものに順位をつけてみるお遊びでしかないが、「あ、これは読みたい、あれは読んでない」と読書欲をかきたててくれるかぎりにおいて、それなりに楽しいものだ。
しかし、まあランキング自体はまるで無意味だし、何を選ぶかによって浮かび上がるのは選び手の趣味でしかないというばかばかしさも否定できない。また、翻訳で読めるものをあげるというのがほとんど唯一の拘束だったが、たとえば上位にあがっているジョイス『ユリシーズ』などは、翻訳で読んでもほとんど意味はないとぼくは思うし(なぜなら「英語ってこんな風に書けるんだ」ということが興味の中心でストーリーは割とどうでもいい、特によくいわれるギリシャ神話との対比なんて単なる口実にすぎない作品なので)、最低500時間くらいはその作品空間に滞在しなければおよそ何もわからないはずだ(その割にみんなあまりに安易にその名を口にしているが)。
人の性癖とは仕方がないもので、プルーストが大作家であることを知りつつ、ぼくには何度試みても通読できない。部分を読んでその文体のテクスチャーを知れば、それで「もういいや」という気になってしまうのだ。
各選者がつける短いコメントはそれぞれにおもしろいが、なかでは「フランスの現代小説も実はカミュとサルトルが頂点」と断言する作家の松浦壽輝さんのそれがとりわけ印象に残った。