Monday, 28 March 2011

古川日出男の炎が

サラヴァ東京での「ことばのポトラック」、終了しました。掛け値無しに、いい集いでした。なかでも焦点となったのは古川日出男さんの朗読。東北の馬たちになりかわった、火の叫び。これを涙なくして聞けるやつがいるか、いたか。ぼくには無理でした。

古川さんは福島県出身、この2週間に伝えられるひとつひとつの地名をすべて実地に知っています。その意味では、きょうの朗読出演者の中で唯一の「当事者」でした。しかし、「当事者」の範囲を限定しないことが、文学の大きな役割。ヒデオの声が伝えるのは人と馬の境界をも越えた、土地のまるごとの生命の叫びと響き、怒りでした。それに感応した聴衆のすべてが、われわれが、その声に立ち会うことによってまさに「当事者」の圏内に巻き込まれていったのだと思います。

言葉は無力です。物理的に無力です、それは石も木々も動かさない。けれどもその無力さが発火させ誘発する行動がある。そしてその行動がどれほどまたさらに無力でも、その無力さをもってしか変わらないことが世界にはある。

企画・進行の大竹昭子さん、サラヴァ東京の潮田あつこさん、ありがとうございました。佐々木幹郎さん、本日の長老(!)としてユーモアをもってみんなをリードしていただきありがとうございました。その他の出演者のみなさん、きょうの声を、それぞれに切実に考えた末の声を、共有できたことは忘れません。そして聴衆として参加していただいたみなさん、みなさんとともに、言葉の無力がはたす逆説的な力をこれからも考えつつ、私たちの社会と生活の火急の課題に少しでも回答を探ってゆきたいと願っています。

東北のために。われわれの生存のために。


(12:30〜1:40)
1.佐々木幹郎「鎮魂歌」

2.くぼたのぞみ「日本語という島で生きのびるための三篇の詩」

3.古川日出男『聖家族』より「馬」

4.東直子・短歌

5.管啓次郎(朗読)「Omninesia」より3編
管啓次郎+Ayuo(朗読とギター)「北と南」より3編
Ayuoのソロ演奏「きみのねむるすがた」 (作詞・作曲Ayuo)
「Drawing Lines by」 ((Poetry by Ayuo)
「Ballad of the Queen Who Died For Love  by Maurice Ravel 」(Words by Roland De Mares, translated by Robert Hess)                


休憩


(2:00 〜3:10)
6. 平田俊子「ゆれるな」「ひ・と・び・と」「うらら」

7.   堀江敏幸『アイロンと朝の詩人』より「「言葉」抜いた大人たち」

8.   南映子「夜行バスは、シワタネホへ」(自作詩)
「トゥスカーニア 7」(ペドロ・セラーノ詩)

9.   間村俊一「うぐいすとなゐ」

10.  小池昌代『コルカタ』より「桜を見に」

11.  佐々木幹郎「明日」(朗読)/かのうよしこ&小沢あき(歌とギター) 
武満徹歌曲「小さな空」「三月のうた」「MI・YO・TA」