2014年11月26日水曜日

沖縄で

連休、沖縄でふたつの学会に参加しました。いずれも会場は名護市の名桜大学。ゲイリー・スナイダー研究者の山里勝己さんが学長を務めている、小高い丘の上のきれいなキャンパスです。

まずISLE-EA (International Symposium on Literature and the Environment in East Asia)。韓国、台湾、日本をはじめとする東アジアの環境文学研究者が隔年で集まる、重要な国際シンポジウムです。今年のテーマは "Unsettling Boundaries: Nature, Technology, Art"でした。上記の国のみならず、カナダ、アメリカ、オーストラリアなどからも参加者があり、充実したパネルがいくつも組まれました。

ぼくは初日に基調講演。"On the Re-wilding Coast: Reflections after 11 March, 2011" と題して、社会と自然の関係を全面的に問い直す機会となった東日本大震災と原発事故後の状況について話しました。畠山直哉さん、赤阪友昭さん、片桐功敦さんから、すばらしい写真をお借りして、ぼく自身が撮影した動画や写真とともに、東北の土地で考えてきたことを伝えようと試みました。

二日目の基調講演はアメリカで活躍するドイツ人批評家でUCLA教授のUrsula Heiseさん。エコクリティシズムをリードする、第一人者です。

思えば1997年、メキシコのプエルト・バジャルタで開催されたACLA(アメリカ比較文学会) で、エコクリティシズムをめぐるはじめてのセッションが組まれたのでした。組織したのはパトリック・マーフィー。上記のハイザ、動物をめぐる理論で知られるキャリー・ウルフ、ぼく、みんなこの分野にとりくみはじめたばかりのころでした。ぼくがゲイリー・スナイダーとヤキ族のエスノポエティクスについて発表したのは、このときでした。

シンポジウムが終わり、日曜日の午後は辺野古へのフィールド・トリップ。あまりに美しい海。基地の建設はとりかえしのつかない破壊をもたらしますが、この海岸で改めて、アメリカと日本との関係、ヤマトと沖縄の関係を、考えないわけにはいきませんでした。すぐお隣の台湾、韓国のみなさんにも、この海の光が、強い印象を与えたようです。

海外からのみなさんと別れて、月曜日はASLE-JAPAN (文学・環境学会)の第20回大会。創立20年を迎えて、大きな転換期にさしかかっていることを再確認しました。まず文学研究を、さらに広い環境人文学、そしてアートへと開いてゆくこと。そして、ともすれば英語圏研究者主体になりがちな研究共同体に、日本文学、他の外国語文学のみなさんの参加を促し、アジア・太平洋圏や北欧(環境人文学の先進地域です)との交流を作り出すこと。

ぼくとしては、写真家、映像作家、造形作家、音楽家、舞踊家、いろいろなかたちで表現にとりくむ人たちにもぜひ参加していただき、文学・人文学研究との接合を試みていきたいと考えています。

興味がある方は、「学会」という名前を敬遠せずに、ぜひお気軽にご参加ください。

2014年11月19日水曜日

「新しい野生」のために

写真家の赤阪友昭さんらと、なんとか実現したいねと相談しているのが、オランダ映画 De Nieuwe Wildernis (The New Wilderness)の上映。今年のレンブラント賞(オランダの最高の映画賞)受賞作で、12週間で70万人が見たという大ヒット作です。

http://www.thenewwilderness.com/

アムステルダム近郊の自然保護区、オストファーデルスプラッセンを舞台とするドキュメンタリー。あの大都市のすぐそばにこんな野生動物の地帯があるなんて、と心から驚きます。

その核心をひとことでいえば、re-wilding つまり再野生化。日本列島も、その方向に進路を修正してゆかないかぎり、未来はありません。

土地は人だけのものではない。すべての鳥獣虫魚と分かち合うことを真剣に考えれば、まずまず、まちがいなく土地に生きてゆけるはずです。過去百年ほどのやり方を改めて。

この作品を買いつけてくれる配給会社、ありませんか? 公開まで、なんでも協力します。赤阪さんはすでに現地取材を行なっているし、華道家の片桐功敦さんもそう。ぼくも来春には行ってみるつもりです。

そしてそんな場所を、地帯を、日本列島に作り出すことを、一緒に考えませんか?

いかんせんこのすばらしい作品、オランダ語版しかありません。ぼくも全体を見ましたが、せめて英語字幕がないと、話の内容はほとんどわからず。オランダ語が得意な人、これを見て、ぜひ教えてください。よろしくお願いします!

2014年11月10日月曜日

梨木香歩『ピスタチオ』

梨木香歩さんの『ピスタチオ』がちくま文庫に。ぼくは解説を書きました。

水とアフリカをめぐる壮大な小説。そしてその全体を「物語論」として読むこともできます。そのあたりを。読んでみてください。

「旅きり」完結!

2年間にわたって連載してきた「すばる」の巻頭グラビア「旅ときりぎりす」、12月号の「アンカレッジ」をもって完結しました。ご愛読ありがとうございました。来年の秋くらいに単行本としてまとめたいと思っています。

旅のスナップ写真と短い文章だけ。このスタイルはやっていて楽しく、いくらでも続けられそうな気もしたのですが、次の旅はもっと緻密なものに。

またどこかで!

2014年11月9日日曜日

午前3時の川

金曜日、下北沢B&Bでの赤阪友昭・小島ケイタニーラブのイベント。前半は主に赤阪さんが月の話をし、ケイタニーが歌い、後半はアラスカの話になって、ぼくも参加しました。

開始前に「詩の朗読を」といわれ、何ももっていなかったので隣のTag Cafeに行ってあわてて書いたのが次の詩。でも現実の映像が頭の中にあってそれをなぞっただけですから、あっというまに書けました。途中でケイタニーのギターの伴奏が入り、そのまま「フォークダンス」の合唱でエンディング。楽しい晩でした。またいつかアラスカに行きたい。

*****

「午前3時の川」


明け方にきみはやってきた
6月の森の夜明けだ
午前3時にやって来たんだ
川が海に流れ出るその場所へ
川だって? そう冷たい水の川だ
黒い岩の岸辺にむかって
激しく水が流れ落ちる
しびれるほど冷たい水だ
なんというさわやかな場所だろう
しぶきを浴びながらぼくは待った
岩のようにうずくまって
本当には暗くならない夜の底を
鮭たちが途切れめなく遡ってゆく
水よりも多い魚の群れ、川底が見えない
流れ落ちる水よりも速く遡る鮭たちの肉だ
ウィスキーよりも濃い色をしたゆたかな鉄の水が
森のあらゆる気配を溶かしている
ぼくは待っていた
長いあいだ待っていた
そこにきみが来たんだ
何も気にせず、何も恐れず
流れの対岸に森からふと現われて
そしてきみの漁がはじまった
川岸の黒い岩に足場をたしかめて
若いお尻を高くあげて顔を水につっこむ
ほら!ほら!大きな鮭をくわえた
身を強くふるわせる鮭をたちまち水に落とした
でもきみは挫けない、鮭の流れは途切れない
ほら!ほら!また鮭をくわえた
尾を強く打つ鮭をきみはしっかり嚙み
両腕でかかえこんで大きな魚を捕まえる
それからのっそり森に入ってゆく
濃い森陰で食べるために
その赤い肉を食べるために
さわやかな肉を食べるために
ぼくは知っている、きみはその頭と
ぎっしりと腹につまったつぶやかな卵しか食べないことを
きっかり7分後、きみはまた出てきて
また褐色の冷たい流れに頭をつっこむ
鮭たちのパニック、噴水のように跳ねる魚たち
きみはのんびりと夢中になってきみの食事を準備する
ブラック・ベア、黒熊、若い娘、黒い毛の
森の娘、アラスカの川の、
遡上する鮭たちを捕えて
その骨を森に返す
それがきみの食事
それがきみの仕事
ほら、空が明るくなった
ほら、森が目を覚ます
きみの食事の贅沢な残り物を狙って
鷲たちが空を舞う
からすとかもめがじっと待つ
アラスカの朝の森だ
森と海のあいだ
午前3時の川

2014年10月27日月曜日

「現代詩手帖」11月号

われわれのプロジェクト「見えない波」が、この号の特集のひとつとなっています。古川日出男、石田瑞穂とぼくの共同詩。そして和合亮一さんを加えた座談会、ロンドンおよびルーアンでのイベントの現地の方によるレポートが掲載されています。ぜひごらんください。

2014年10月25日土曜日

諏訪敦彦さんをお迎えして

先日お知らせした『異境の中の故郷』、下北沢B&Bでの上映会が決まりました。

http://bookandbeer.com/blog/event/20141109_b_ikyou/

ゲストは映画監督の諏訪敦彦さん! 大川景子監督の師匠です。このドキュメンタリーを、文学者の「記録」ではなく独立した映像作品として論じるとき、何が見えてくるか。逃せないイベントです。

温又柔が進行役。この映画をまだごらんになっていない方、ぜひどうぞ。