2015年4月17日金曜日

英語の勉強?

新学年になると、学部の新入生から博士課程の学生まで、みんなが知りたがること、それは英語の勉強法。で、英語教師としてのこっちの答えは、ひとつだけ。読むことが基本。読めれば書けるようになる、話せるようになる、その逆はなし。聞き流し学習教材や英会話学校は、時間とお金のむだ。やるべきことはひとつ。

1)B6か4×6の大きさのカードを準備する。
2)これはという英語の文章を1段落(か適当な長さで)書き写す(かコピーを切り抜いて貼る)。
3)それを毎日読む。本当に毎日読む。覚えてしまうまで読む。覚えたら、捨てる。

それだけです。 こんなカードがつねに手元に10枚あって、少しずつ入れ替わっていくなら、勉強といってもそれだけ。ただし妥協なく毎日読むこと。1日1回ずつでいいから。声に出したり、黙読だったり。10枚読んでも5分とかかりません。

学部1年生だったら、たとえばこんな文。

So then I had to choose another career, and I learned to pilot airplanes. I have flown almost everywhere in the world. And, as a matter of fact, geography has been a big help to me. I could tell China from Arizona at first glance, which is very useful if you get lost during the night. (Antoine de Saint-Exupéry, trans. Richard Howard)

学部3、4年だったら、たとえばこんな感じ。

The old man looked at the old woman, who stood up stiffly, from having been in one position so long,  and together they got off the train, missing their appointments in Venice, and spent the remaining years of their life in a foreign country, rather than part with a pair of birds that they had grown attached to on a long train journey, because of their color, which was as blue as the beginning of night when there is deep snow on the ground, and their song, which was more delicate than gold wire, and their movements, which were like the reflections of water on a wall.  (William Maxwell)

大学院生だったら、たとえばこれ。

The word 'desire', which was the object of our reflections, comes from the Latin DE-SIDERARE, which means first and foremost to note with regret that the constellations, the SIDERA, do not form a sign, that the gods are not sending any messages in the stars. Desire is the disappointment of the augur. Insofar as it belongs to desire, and is perhaps the element of poverty in it, philosophy, as we have seen, begins when the gods fall silent. (Jean-François Lyotard, trans. Andrew Brown)

カード1枚にいずれも十分おさまるよね。それを毎日、読むこと。冠詞の使い方、語と語のつながり方にも、句読点にも、すみずみまで注意して。「ブロークンな英語でいい」などと思ったら負け。よくいわれる「日本人は文法を気にするからしゃべれない」などという、まったく意味のない戯言は相手にしないように(それは「文法」という言葉を完全に誤解している)。とにかく、ちゃんとした文を毎日読む。それをくりかえすだけ。

それ以外の外国語の勉強法はありません。さあ、あとは実際にやるかやらないかだけです。

2015年4月13日月曜日

「作る人になろう」

明治大学学部間共通総合講座「作る人になろう」2015が始動しました。月曜の4限、真新しい駿河台グローバル・フロントのグローバル・ホールにて。明治の学生なら全学部全学年がとれる科目です。

毎回ゲスト講師としてさまざまな分野の「作る人」をお招きし、授業をお願いします。あまりに画期的な内容。講師の顔ぶれを見て、驚いてください。ドリアン助川、小島ケイタニーラブ、佐々木愛、温又柔、三角みづ紀、富田俊明、笹岡啓子、港大尋、佐野陽一、佐藤文則、新井卓。こうして見ると今回はちょっと写真の比重が高く、写真に関心のある人にはとりわけ興味深い講座となるでしょう。

作品を作るとはどういうことなのか、何をめざすのか。その営みの端緒からはじまって、それぞれの創作の秘密をみなさんがぞんぶんに語ってくれるはずです。

きょうはイントロとして、ルイス・ブニュエル『糧なき土地』、アラン・レネ『夜と霧』という、いずれもドキュメンタリー映画史上に残る作品を紹介しつつ、われわれに「歴史」を見せる映像の性格を考えました。

来週から本格的に開始。まずは、わが尊敬する友人、ドリアン助川さんです。 いまから楽しみです!

「東京ヘテロトピア」再始動

2013年のフェスティバル/トーキョー参加作品だったPort Bの巡礼型極小演劇作品集とも呼べる「東京ヘテロトピア」。あのテクスト群がiPhoneのアプリとなって甦りました。ダウンロードして、現地に行き、関連する物語を耳で聞くという趣向。このアプリ版の完成を記念して、第14番めの場所として選ばれた東京ジャーミィにてイベントが開催されました。

代々木上原にあるこの美しいモスク、その外見は多くの人が知っていることと思います。でもその建物の内部の荘厳な美しさといったら! 日曜日はジャーミィの下山さんにお話をうかがいながら建物を案内していただき、ついでイスラム教徒のみなさんのお祈りを見学させていただきました。祈りを呼びかける声の、しびれるほどの良さ。それにつづく祈りの、しーんとした沈黙。

東京へテロトピアをめぐる林立騎さん、高山明さんの説明のあとで、ぼくがこの日のために書き下ろした物語が、15歳のイスラム教徒の少女により朗読されました。 感動。イスラムの信仰世界への新たな目覚めとなった一日でした。

ジャーミィはどんな人でもふらりといって見学することができます。併設のトルコ文化センターも興味深い。ぜひいちど訪ねてみることをお勧めします。イスラム教をめぐる、単なる無知に基づく偏見から自由になるためにも。ぼくもまた行ってみるつもりです、何度でも。

2015年4月9日木曜日

清泉女子大学で

きょうは花冷え(?)。金曜日から明治の授業がはじまるまえに、今年だけ非常勤で出講する清泉女子大学英文科に行ってきました。主として2年生対象の「翻訳基礎演習」、主として4年生対象の「翻訳研究」を担当します。

きょうは初回のイントロとして、William Maxwell の短編をとりあげました。前者には "The blue finch of Arabia"、後者には"The girl with a willing heart and a cold mind"を配布。どちらもあきれるほど巧みな短編。こういう話が書けたら!と、読むたびに思います。また授業のスタイルとして、こうした作品をゆっくり読みながらその場で注釈を加えていくのが、自分にはいちばん合ってるなと、改めて。

そして来週からが本番。テクストはElizabeth McKenzie, Stop That Girl と Aimee Bender, The Particular Sadness of Lemon Cake です。大好きな友人たちの長編作品を、これから一年間、のんびり読んでいきます。楽しみ! 思いがけない読みをどれだけ引き出せるか、ともあれやってみます。

2015年4月8日水曜日

春学期の大学院ゼミ

以下のように大学院ゼミを行います。見学希望の方はいつでもどうぞ! 明治大学中野キャンパス7階中央の吹き抜けになったラウンジに、14時30分までにいらしてください。(ゼミは4、5限、14時40分から17時50分まで。)

本年度前半は基本に立ち戻り、批評的な射程のある本を読んで議論する。フィクション/ノンフィクションの区別やそれぞれのサブジャンルに囚われない、コンセプチュアルで探求的な文のあり方を探ることにしたい。大きな方針として、2週間で1冊を読み、議論を深める。学期末には、リサーチ・ペーパーを提出する。長さは400字詰め原稿用紙換算20枚を標準とする。平行して36冊の個人ブックリストを制作する(別途指示)。

以下、課題とする図書。またディスカッションのリーダーを指定する。M1の4名それぞれの研究テーマに合わせた。


4月16日、23日 
管啓次郎『ストレンジオグラフィ』(左右社)=全員

4月30日、5月7日 
谷川健一『常世論』(講談社学術文庫)=上城

5月14日、21日
石牟礼道子『苦海浄土』(講談社文庫)=北国

5月28日、6月11日
吉本隆明『宮沢賢治』(ちくま学芸文庫)=小金

6月18日、25日
中井久夫『伝えることと伝わること』(ちくま学芸文庫)=山口

7月2日、9日
ティム・インゴルド『ラインズ』(左右社)=全員

7月16日
発表(ひとり15分厳守)=全員

7月23日
まとめ


6月4日はImaginAsia 2015のため休講。その後、 後期にはインゴルドの論文を英語で輪読する予定。
         

2015年4月5日日曜日

新年度、よろしく

「特別研究」として授業を免除されていた2014年度が終わり、4月1日から通常業務に復帰しました。今年は明治大学理工学部で「総合文化ゼミナール」2つと1年生対象の「英語リーディング」1つ。理工学研究科で大学院科目1つ(前期は「コンテンツ批評」、後期は「映像文化論」)と修士課程のゼミ2コマ。明治大学全体の全学部共通科目として「作る人になろう」。さらに清泉女子大学で翻訳演習2コマを担当します。

大学院ゼミに関しては、随時、見学をうけつけます。興味がある人は毎週木曜日の13時ちょっとまえに、明治大学中野キャンパス7階に来てください。夜までだらだらやってます、たぶん。

内容については、これも少しずつこのブログで紹介していきます。この春入学の修士課程の新入生は4名。これから思い切り冒険的な内容にとりくむつもり。 セノポイエーシスの合言葉に忠実に、新しい動きを作り出していきましょう!

2015年3月29日日曜日

アメリカ比較文学会の発表終了

シアトルで開催中のアメリカ比較文学会、われわれのセミナーは「日本のエコクリティシズム」です。土曜日は第2日。ぼくも発表を終えました。

きょうはぼくが「2011年3月11日以後の写真」と題して、畠山直哉さん、笹岡啓子さん、露口啓二さんにお借りした写真を見せながら、人間社会と自然の関係について話しました。ついで、もともと参加予定だったけれど都合で断念した赤阪友昭さんが福島を撮影した写真を、ぼくがスライドショーで紹介。

そのあと、華道家・みささぎ流家元の片桐功敦さんが、 この3年ほどのご自分の福島での創作活動を、写真と短い言葉で提示してくださいました。比較文学会への華道家の参加は異例中の異例でしょう。あまりに美しくまた悲しいイメージと、きらめく短詩のような言葉が、聴衆の深い沈黙を誘いました。

高校と美大をアメリカで過ごした片桐さんは、英語も完璧。ぼくとはまったく同時期にここシアトル(ニルヴァーナのデビュー期です)に住んでいたこともあって、ちょっとした意図せぬ同窓会的雰囲気にもなりました。

そのあと、英語で詩を書いている高野吾朗さんが、福島を主題にした長い作品を朗読。これもパワフル。こうして学会というよりはアートのイベントみたいだった2日めが終了。参加者それぞれが大きな、予想もつかなかった刺激をうけたはずです。

次は、この線をどう延長してゆくかにかかっています。それが学会の存在意義。