Thursday 30 October 2008

ル・クレジオについての記事

先日、ル・クレジオのノーベル賞受賞が決まった晩、深夜に時事通信からうけた依頼でほぼ徹夜で書いた記事(5枚)が、いくつかの新聞に配信されていた。掲載紙のいくつかが、まとめて送られてきた。

神奈川新聞(10月15日)、北日本新聞(15日)、苫小牧民報(16日)など。見出しはおまかせなので、各紙によってちがうのもおもしろい。「比類のない想像力、硬質なみずみずしさ」「極度の鋭敏さ魅力」「比類なき『硬質なみずみずしさ』」など。

ともあれ、来年は彼の故郷であるモーリシャス島/ロドリゲス島への旅を果たしたいもの。

ヴァレリー/クレイン

きょう10月30日はポール・ヴァレリーの誕生日(1871年)。そしておなじ年の11月1日にはスティーヴン・クレインが生まれた。

使用言語もスタイルも思考の癖もまるでちがうこの二人の詩人について、星座の影響を語るのはむずかしそう。だが、このところ、夭折したアメリカ詩人クレインの天才に衝撃をうけつづけているので、きょうは彼の短い詩をふたつ、ここに紹介しておく。いずれもタイトルはない。


おれは砂漠を歩いていた。
そして叫んだ。
「ああ、神よ、私をここから連れ出してください!」
声が聞こえた。「ここは砂漠ではない」
おれは叫んだ。「ええっ、でも----
砂と、熱と、空っぽの地平線」
声が聞こえた。「ここは砂漠ではない」


風に乗ってささやき声が聞こえた。
「さよなら! さよなら!」
小さな声が暗闇の中で呼んだ。
「さよなら! さよなら!」
それでぼくは両腕を前にさしのべた。
「ちがう----ちがう----」
風に乗ってささやき声が聞こえた。
「さよなら! さよなら!」
小さな声が暗闇の中で呼んだ。
「さよなら! さよなら!」


ほんの数行で、なんという驚くべき世界。クレインについては全訳詩集を準備しようと思っている。どこか出してくれる出版社が見つかればいいんだけれど。見つからなかったら、新聞紙の大きさの紙の表裏に印刷したものを、自分で作ってみようか。

みんなが忘れたころにひょっこり完成するかもしれないので、お楽しみに!

Tuesday 28 October 2008

暑すぎる秋

まだ半袖、昨日も。いくらなんでも暑すぎる。秋はどこに行った?

いろいろな行事は順調。24日(金)のDC系主催トヨダヒトシ・スライドショーは、大きな階段教室がゆったりと埋まる数のお客さんを迎え、ぶじ終了。トヨダくんの世界を初めて体験した人たちの感動の声を、いくつも聞いた。

暗闇の中、移りゆくイメージを見ているうち、いつしか彼の生活のそばに自分もまたずっと幽霊のようにたたずみ、すべてを経験してきたかのような、不思議な気持ちになる。参加してくださったみなさん、ありがとうございました。伊藤くんをはじめとする実行委員会のみなさん、ごくろうさま。和泉の写真部のみなさんも。

27日(月)の水田拓郎さんのレクチャーとライヴも、ぼくはまったく知らない電子音楽の世界だけど、たっぷり楽しめた。紹介されるミュージシャンたちは「おおっ!」と思う人たちばかりだし、水田さんが関わっているアムステルダムのSTEIMの活動も興味深い。

アムスがおもしろいということはいまさらいうまでもないんだろうけど(ぼくらの学生時代からいわれていた、いや、スピノザの時代からいわれていたか)ぼくはいったことがない。いずれは、そんな機会も(でもオランダ系の土地で行きたいのはカリブ海のABC諸島)。

余談だが、水田さんはお名前をアルファベットではTakuro Mizuta Lippitと記している。映画研究のAkira Mizuta Lippitと関係があるんだろうか(ご兄弟?)。これは聞きそびれた。

この秋はフランスのいい作家たちの来日が相次いでいるのだが、講演会は、どれにも行っていない。ちょっと自分の仕事が多すぎて。そうこうしているうちに、中国行きも目前になった。

Wednesday 22 October 2008

水田拓郎ライヴのお知らせ

来週の月曜日、第11回ディジタルコンテンツ学研究会として、DJ・電子音楽家の水田拓郎さんのライヴを開催します。ホストはDC系・宮下芳明さん。こんな機会はめったにありません。ぜひ、どうぞ!


 このたび、第11回ディジタルコンテンツ学研究会では、オランダ アムステルダムに拠点を置く電子音楽センターSTEIMの水田拓郎氏が帰国されている期間に明治大学で講演・ライブをしていただくことになりました。これまでの活動、音楽やその演奏のためのインタフェース開発についての姿勢について講演いただくとともに、ライブ演奏もいただく予定となっております。

日 時:10月27日(月)18時00分〜19時30分
場 所:生田キャンパス 中央校舎6階 メディアスタジオ
明治大学 生田キャンパス アクセスマップ
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/ikuta/access.html
ゲスト:水田拓郎
ホスト:明治大学理工学部情報科学科 宮下芳明 専任講師

水田拓郎 プロフィール:
1978年生まれ。1995年よりDJとしてアンダーグラウンド電子音楽シーンで活動する一方、smash TV productionsを組織してジャンルを超えたイベントを東京各所で開催。2001年慶應大学文学部美学美術史学科卒業、同年に研究員として熊倉敬聡、芹沢高志らとともに学術フロンティア・インターキャンパスプロジェクトの立ち上げに関わる。2004年ニューヨーク大学インタラクティヴ・テレコミュニケーションズ(ITP)学科でTom Igoe、Eric Singerの師事のもとフィジカル・コンピューティング修士課程修了。翌年に文化庁新進芸術家海外派遣制度のもとオランダ・デンハーグのソノロジー・インステュートとアムステルダムのSTEIM電子音楽楽器スタジオに在籍する。近年はSTEIMのアーティスティックディレクターとしてリサーチ、キュリエーション、アーティストレジデンシープログラムのディレクションを任される。ユニークな演奏ツールを製作/使用しながら、楽器としてのターンテーブルの独自性を追求し精抑楽器としてのターンテーブルの独自性を追求し、精力的にライブ活動を行っている。
(参考) http://www.djsniff.com

      

チャランケ

11月1、2日の週末は、中野のチャランケに行こう!

http://www.charanke.com/index.html

でも、チャランケって何? じつはよく知らない。北海道と沖縄を背景にもつ同僚の浜口稔さんのお勧め。アイヌと沖縄、そして世界の先住民文化のお祭りらしい。

これは楽しみ。では、会場で。

Sunday 19 October 2008

照屋勇賢?

同僚の清岡さんがブログに記している沖縄出身のアーティスト、照屋勇賢。

http://tomo-524.blogspot.com/

これはすごい、おもしろい。清岡さんは、彼のことを、同僚の倉石さんに聞いた。倉石さんも、最初どこかで誰かに聞いたはず。この伝言ゲームを遡上してゆくと、結局、ゆきつくのはアーティストその人の生身の現場。

この構造が、おもしろいと思う。つまり、あらゆるコトバの編成の中心にあるのは、何かほんとに新しいものを作り出した人であり(ジャンルが何であれ)、その「もの」を核として、コトバという使い古されたものが新たに位置を整え、新鮮になるということ。

マクドナルドの紙袋をひとつの樹木として再生させる、このヴィジョン。すごい。感嘆する。

ところで勇賢さんて、りんけんバンドの林賢さんと関係あるのかな。いつか北谷に見にいきたい、りんけんバンド。

佐藤文則写真展@ギャラリーゼロ確定

金曜日、フォトジャーナリストの佐藤文則さんが生田キャンパスをたずねてくださって、写真展の開催日程が決まりました。

12月2日から1月9日まで。生田図書館のギャラリー・ゼロにて。

佐藤さんは、ハイチ、ミャンマー、インド、東チモールなどを追ってきた、第一線の社会派フォトジャーナリスト。そしてその写真のあざやかなすばらしさ、美しさには、しばしば言葉を失うほどです。

http://www.k2.dion.ne.jp/~satofoto/

今回の展示はDC系でぼくの研究室に所属する大学院生、宇野澤くんとガルシアくんが準備を進めてくれます。

会期が十分にあるので、ぜひいちど、生田の丘への小さな散歩を予定に入れておいてください。

佐藤さんは明治のOB(文学部)。DC系からも、写真・映像分野の仕事に進む人が必ず近い将来に出てくるはずですが、学生のみんなには、この機会にお目にかかってお話をうかがうことを勧めます。

Saturday 18 October 2008

小池桂一のイラスト!

講談社のPR誌「本」11月号に、短い旅行エッセー「アコマ、『空の村』」を書きました。pp. 51-53です。

なんといっても見てほしいのは、あの伝説のマンガ家・小池桂一によるイラスト! 見開きでがーんと、ページの上半分をぶち抜き。脳の中で太陽が爆発したみたいな気がする。

余白なく、そのまま断ち落としになっているレイアウトもすごい。ヌエボメヒコ(ニューメキシコ)の大地がよみがえる。大きな書店でただでもらえますから、ぜひごらんあれ。

Thursday 16 October 2008

バーゲン本

このところ運動不足もいいとこ。で、学習院の授業が終わった後、散歩がてら明治通りを新宿まで歩いた。ぜんぜん大した距離ではないが、ちょっと爽快。アップダウンがもっとあると、もっといい。

それでジュンク堂新宿店に寄ってみると、洋書のバーゲンセールをやっている。洋書といっても英語の本ばかりだが、点数はかなりある。なんとすべて半額! 11月30日まで。

こうなると、また悪い癖で、買わなくていいものまで買ってしまう。とりあえずダーウィンの『ビーグル号航海記』とカフカの『短篇全集』。どちらも1200円とかそれくらいだから、楽しみの大きさに較べると、ほんとに安い。

また来週も寄るかも。たぶん、いわゆる「古典」しか買わないけど。

Thursday 9 October 2008

ル・クレジオ

このところフランス語圏からのノーベル文学賞受賞者がなかったが、ひさびさ。

現在、フランス語で書いているもっとも充実した作家であることはまちがいないので、いかにも当然ではある。フランス語作家としては1985年のクロード・シモン以来。「フランス人」作家としては2000年の高行健以来。

ぼくは別にノーベル賞に特に興味があるわけではないけれど、ル・クレジオかエドゥアール・グリッサンが受賞したらすばらしいだろうな、とは思っていた。

ともあれ、自分が訳した作家がノーベル賞を受賞するのは、そうある話ではなさそう。(ぼくが訳したのはアメリカ先住民をめぐるエッセーを集めた『歌の祭り』という本、岩波書店。そして来年後半に、彼のヴァヌアツ旅行記『ラガ』を出すつもり。)

奇しくも、さきほど電車でアメリカ文学の飯野友幸さんと乗り合わせ、飯野さんが訳しているアメリカの詩人ジョン・アシュベリーが今年は有力候補だという話を聞いたばかりだった。そのときには、ル・クレジオのことはまったく思い出しもしなかった。

ちなみに、ル・クレジオはモーリシャスとフランスの二重国籍。半分は「非フランス人」。

将来、たとえば多和田葉子がそのドイツ語作品によって受賞するとか、ブラジルの日本語作家が受賞するとか、ぜひそういう方向に進んでほしいノーベル賞だった。

国籍で文学を語るのを、いいかげん止めるためにも。その点、クッツェーが南アフリカ作家からオーストラリア作家に変わったのは、おもしろい例になるかも。

10月24日、トヨダヒトシ・スライドショー@明治大学和泉キャンパス(明大前)

Visual Diary / Slide Show
Hitoshi Toyoda
『NAZUNA』/『spoonfulriver』

「闇に挟まれながらスクリーンに現れる"像"は
 手を伸ばしても掴むことは出来ず、
 日々の中での失敗やよろこびのように、
 やがて時間に押し流されて消えていく」

ニューヨークを生活と活動の拠点に、
何も跡を残さない"スライドショー"というスタイルにこだわって、
映像日記を発表している写真家、トヨダヒトシ。

今回は歴史を重ねた急勾配の階段教室が会場となります。
場の記憶が濃密に漂うこの空間に、大きなスクリーンを設置し、
つながりのある2作品を上映します。

■2008年10月24日 (金)
■開場
17時30分
■上映
18時00分 - 19時30分 /『NAZUNA』
20時00分 - 21時20分 /『spoonfulriver』
■入場
無料
(入れ替え制)
(各回とも席に限りがありますので、お早めのご来場をおすすめします)
■会場 
明治大学和泉キャンパス第2校舎3番教室
〒168-8555 東京都杉並区永福1-9-1
(京王線・井の頭線 明大前駅下車 徒歩3分)

■上映作品

『NAZUNA』(2005 version/90min./silent)

9.11.01/うろたえたNY/11年振りの秋の東京を訪れた/
日本のアーミッシュの村へ/アフガニスタンへの空爆は続く/
ただ、/やがて来た春/長くなる滞在/
写真に撮ったこと、撮れなかったこと、撮らなかったこと/
東京/秋/雨/見続けること

ー ある夏の、雨のブルックリンから始まる1年数ヶ月の日々を綴った
  長編スライドショー

『spoonfulriver』(2008 version/80min./silent)

2005年春先の、ニューヨークの平凡な道から始まる/このありふれた日/
いくつかの旅をした/出雲崎/コペンハーゲン/グラーツ/残された言葉/
今も/東京/水のように/思いを遂げることと
幸せになることは同じではないのかもしれない/
集めた光/去ってゆく音/ニューヨーク/ひと匙の河

ー 500枚の写真からなる近作映像日記

■主催:明治大学大学院ディジタルコンテンツ系
    トヨダヒトシスライドショー実行委員会
■トヨダヒトシ Website:http://www.hitoshitoyoda.com/
■お問い合わせ:実行委員会代表 伊藤 貴弘
Tel : 090-9292-8513
Website : http://www.dc-meiji.jp/
Mail : toyoda.hitoshi.dc.2008@gmail.com

山と読書

『岳』のどこかに、二つの山に同時に登ることはできない、というような言葉があって、まったくそうだなと思った。

それでちょっと考えてみると、読書と登山には似ている部分がたくさんある。

(1)二つの山に同時に登ることはできない。
(2)標高が問題なのではないし、山頂をきわめることが問題なのでもない。
(3)いくつもの山にとりあえず登ることもできるが、ひとつの山に何度も登ってはじめて見えてくることもある。
(4)ひとつの山にひとつのルート(解釈)しか知らない者もいれば、いくつものルートを発見する者もいる。
(5)人をガイドできるまでの知識を得る者もいれば、いつまでもお客さんで終わる場合もある。
(6)そこに住む動植物のことまでよく知るようになれば、どんな小さな里山だって、無限の宇宙に呼応している。

どう?

文学研究の道に足を踏み入れて30年、いまはある限定された地形をよく知ること、にむかっているような気がする。それは砂漠かも、島かも、平原かもしれない。趣味からいって、都市ではない。(文学の驚くほど大きな部分が、都市しか知らないのはどういうことだろう?)

ひとりの著者はひとつの山系で、そこでは主要作品が峰をなす。

ジョイスはむちゃくちゃに標高が高いが、峰の数は少ない。バルザックはアルプスで、しかも峰の数も多い。ぼくの師匠ルドルフォ・アナーヤなんかはニューメキシコのサングレ・デ・クリスト山脈とその周辺の荒野。標高ではジョイスにとても較べられないが、味わいは他のどこにも代え難い。そして彼の作品を必要とする地元の人たちが、たくさんいる。

ぼくは生田の丘に、学生たちを連れて、授業をサボって、歩きにゆく。それでいいじゃないか、と思う。それだって文学だ、とも思う。あるいは、もしそこに文学を見出せないなら、どこにも見つからないだろう、とも。

そして最後に思うのは、買ったまま読みもせず書棚に並べられる本は、結局、山岳写真にすぎないということ。いつか、行きたい。いつか、読みたい。でも行けない、技術もない。読めない、知識もない。

こうしてハイデガーもホワイトヘッドも、トルストイもプルーストも読まずに、長い年月をすごしてしまった。

Wednesday 8 October 2008

ARICAの公演

同僚の倉石信乃さんが参加している劇団、ARICAの公演が9日から12日まで行なわれる。詳細は

http://www.realtokyo.co.jp/events/view/26857

先日、ニューヨークで上演した作品『キオスク・リストラ』の最新ヴァージョン。

見に行きたいが、この週末にかけてはちょっとむずかしいかな。行けなかったら、ごめん!

そこに山がないから

運動は嫌いじゃないし、遊びごとはいくらでもやりたいんだが、時間がない。運動不足になる。

それで実践しているのが、地形の読み替え。というと大げさだけど、要するに「エレベーター」や「エスカレーター」を、はじめから無いものとして扱う。建築物を、山と見なす。

それで5階にある研究室でも、9階にある自宅でも、階段で。バックパックには常時10冊は本が入っているので、そこそこ重みが出る。コンピュータもつねに持っているから、7、8キロはあるだろう。少しは鍛錬になる。

それでも、やらないよりはまし、という程度か。足だけじゃなくて、壁があればとりあえず登る、という段階に行けるなら。

夏場は汗をかくのを厭って、怠惰になりがちだった。これからは、体を動かしてちょうどいい。研究室が11階にないこと(11階は建築学科)、秋葉原のサテライトキャンパス(6階)が階段では上がれないことが、悔やまれる。

Monday 6 October 2008

『岳』の楽しさ

書店でふと手にしたマンガ、石塚真一の『岳』。どういう作品かも知らずに第1巻を買って読んだら、いい。それで2〜6まで改めて買いにゆき、週末に通読してしまった(逃避、逃避)。

おもしろい! 山岳レスキュー・ボランティア話が、ここまでおもしろいなんて。なんといっても主人公、三歩の単純明快で強烈なキャラクターがいい。そして、人情話にじーんと感動する。

明治の卒業生で、一緒にクック諸島に遠征した小林ユーキが、9月に北アルプス南峰南稜ルートを走破して、見せてくれた写真もよかった。それが頭にあったから、山岳マンガを手にすることになったのかも。

山とは、縁なく過ごしてきた。いちばんくりかえし登った山は、ダイアモンド・ヘッド。ついで、オークランドの沖にあるランギトト。東京近郊では、高尾山にすら登ったことがない。上高地にすら、行ったことがない。

DC系の年中行事として、丹沢か秩父の山に登ってみたいもの。作者・石塚真一は、アメリカの山々をずいぶんあちこち知っているみたいだ。ぼくは遠くから眺めておしまいだったところも。これからは山かな、やっぱり。でも冬山に行ける日は、もう来ないかも。

第一には、体力が衰えつつある。第二には、これから冬山技術をゼロから身につけるなんて、これから飛行機の操縦を覚えるよりむずかしそう。でもさいわい足は丈夫だから、春から秋にかけてのトレッキングは、いくらでも。

三歩の世界(冬山の遭難救助)は、紙の上で楽しませてもらおう。

Na Hiwahiwa Hawai'i

JCBホールでフェスティヴァル・ナ・ヒヴァヒヴァ・ハワイを観た。

第1部がフラ・カヒコ(伝統ダンス)、第2部がフラ・アウアナ(現代ダンス)。どちらも堪能。

特に3番めに出演した14人のワヒネ(女性)のダンサーのすばらしさには、茫然とした。Aloha Dalireのハーラウ、Keolalaulani Hālau 'Olapa Ō Lakaのみなさん。

今年はクック諸島でも最高の踊りを毎晩見ることができたが、クック諸島、タヒチのそれぞれの楽しさや力強さに較べても、ハヴァイイのフラの信じられないほど洗練された優美さは、きわだっている。

むかしハワイ大学で人類学を勉強していたころ(1987年)、踊りを習い始める勇気がなかったのが悔やまれる。

いちどメリーモナーク(最大のフラのコンペティション)を見に行きたい、ヒロに。踊りはいい。踊りは、身振りの音楽。

Sunday 5 October 2008

シャン料理

メインストリームのミャンマー料理の他に、東北部のシャン料理があるらしい。その店は

http://www.ayeyarwady.com/myan_restaurant/nonginlay/index.htm

とりあえず、こんど、梯子をしてきます。

Saturday 4 October 2008

リトル・ヤンゴン

日放協で高田馬場のミャンマー人コミュニティ「リトル・ヤンゴン」をめぐるドキュメンタリーをやっていたので、最後まで観る。

およそ5000人が暮らす。軍政に批判的な人も、そうでもない人も。そして今年のサイクロンによる大打撃には、みんなたまらない思いをしている。

あれだけババに行っても、ミャンマー系の人たちとの接点はまるでなかった。こんど、まずは、食べ物屋さんに入ってみることにしたい。たとえば

http://e-food.jp/blog/archives/2007/08/mingaraba.html

あたりかな。誰か一緒に行きませんか?

思えばぼくが会ったことのある唯一のミャンマー人は、ある知人(アメリカ人)の奥さん。彼女も事実上の亡命者。どんな話をすればいいのかよくわからなくて、あたりさわりなく終わった。

でもほんとはどんな話だって、思いつくままにしていいのだと思う。ほとんどの出会いは、一期一会なんだから。自分の無知をさらけだしたって、それは仕方がないこと。

世界はつねに危急の事態にある。そこでは多くの場合、沈黙は贅沢だ、たぶん。

ミュリエル・バルベリと谷口ジロー

フランスの作家で現在、京都在住のミュリエル・バルベリ。彼女とマンガ家の谷口ジローの公開対談が11月5日、日仏学院で行なわれます。

谷口さんの作品は続々とフランス語に訳されていて、書店では『孤独のグルメ』なんかが平積みになっているとか。バルベリさんが彼のファンで、今回の対談が決まったようです。司会を務めるのは、わが同僚、清岡智比古さん。

バルベリさんの『優雅なハリネズミ』は、フランスでは102万部という大ベストセラー。

http://www.livreshebdo.fr/actualites/DetailsActuRub.aspx?id=1821

ぼくはまだ読んでいないけど、まもなく日本語訳が出る模様です。

彼女ももともと哲学教師ですが、フランスのおもしろいところは哲学者たちの多くが小説を書くこと。現代の女性作家では、たとえば昨年来日したシルヴィー・ジェルマンもそうでした。そのジェルマンさん、いま写真家の畠山直哉さんの写真集『シエル・トンベ』のためのテクストを執筆中だそうです。

ぼくは哲学者でも作家でもありませんが、清岡さんは(じつは!)小説家でもあります。この対談の進行には、うってつけの人。ぼくは谷口さんのファンなのでぜひ行きたいけど、その日はちょっと微妙。みなさん、ぜひどうぞ。

Thursday 2 October 2008

Pop Africa

11月中旬、以下のような催しがあるそうです。アフリカの現在を知るにはうってつけかも。ぼくもできるだけ行ってみたいと思っています。


POP AFRICA アフリカの今にノル?!
普段着のディープなアフリカ:その美学・音楽・力学・知恵の深みにハマる2日間

開催日:11月15日(土)、11月16日(日)9:30-18:00(開場9:00)
場所: 国士舘大学世田谷キャンパス梅ヶ丘校舎34号館3階 
参加費:各日のみ有効 1500円、2日間通し 2000円
主催: ポップアフリカ実行委員会 
ホームページ:http://popafrica.homiez.net
問い合わせ先: popafrica@yahoo.co.jp

第一日 アフリカと日本のポップな関係

[開会挨拶] 実行委員長 岡崎彰(一橋大)「この企画の主旨について」
9時30分~9時45分 会場B303教室

� 日本のアフリカ的世界
[個人研究発表] 
9時45分〜11時25分 会場B303教室 
菅野 淑(名古屋大)「在日セネガル人による舞踊音楽活動」
川田薫(エイズ予防財団)「六本木のアフリカ出身者のストリートの仕事」
高村美也子(名古屋大)「名古屋でサバイバルするアフリカ人」
松本尚之(東洋大)「歌舞伎町でヤムイモの収穫を祝う:在日アフリカ人の同郷団体と祭り」
司会 和崎春日(名古屋大)

� 越境するアフリカ的美学
[個人研究発表]
11時35分~12時50分 会場B303教室
岩崎明子(一橋大)「移動し魅惑するシェタニ:マコンデ、ティンガティンガとアフリカン・ポップアートの魔術」
海野るみ(お茶の水女子大)「アンビリーバーボーな美の創造:誰がコイサンのお尻を美しいと言ったのか?」
太田雅子(京都大)「セネガル写真小史:『芸術』写真のなりたちを中心に」

昼食 [12時50分~13時50分] /会場移動[B303→B301]

[パネルディスカッション](�「越境するアフリカ的美学」の続き)
13時50分~15時20分 会場B301教室
テーマ「『アフリカ・リミックス』再訪:ポップアートと(しての)アフリカ的モダニティという謎々」
川口幸也(民博)、吉田憲司(民博)、佐々木重洋(名古屋大)
司会 岡崎彰(一橋大)

� 日本のアフリカ系音楽
[個人研究発表]
15時30分~16時20分 会場B301教室
鈴木慎一郎(信州大)「レゲエmeets核の記憶@焼津港」
松平勇二(名古屋大)「日本人を魅了するンビラの魔力:ロワンビラの目指す音楽」

[日本のアフリカ系ミュージシャンによるトーク+パナフリック・コンサート]
16時30分~18時30分 会場B301教室
武田ヒロユキ(西アフリカ・ジェンベ)
ハヤシエリカ(南部アフリカ・ンビラ)
アニャンゴ・向山恵理子(東アフリカ・ニャティティ)
司会 鈴木裕之(国士舘大)

懇親会:19時00分~21時30分(DJ:African Deep Pop Crew+Live Performance)


第二日 アフリカのポップカルチャー

� 売る/ごまかす—起業家としてのアーティスト— 
9時30分~11時10分 会場B301教室
[個人研究発表]
井上真悠子(京都大)「東アフリカにおける『みやげ物絵画』の展開:“出張”する画家と画家を呼ぶ客引き」
中村香子(京都大)「サンブルのビーズ装飾:観光化・グローバル化の文脈」
小川さやか(京都大)「現代版『ウサギのかしこい商売』:タンザニア都市零細商人たちの騙しの技法とユーモア」
川瀬慈(日本学術振興会)「エチオピア音楽芸能の都市的展開:女性アズマリ、ドゥドゥイエによるポルノグラフィック・パフォーマンスを事例に」
司会 近藤英俊(関西外国語大)

� 集う/ふるまう—ニューメディアと自己表現— 
11時20分~12時35分 会場B301教室
[個人研究発表]
清水貴夫(名古屋大)「ワガドゥグのクールなラスタ:手工芸品に込められる『アフリカ』」
矢野原佑史(京都大)「〈リアル〉を演じるエンターテイナー:カメルーン首都ヤウンデにおいてヒップホップを実践するアングロフォン」
大門碧(京都大)「口パクする若者たち:ウガンダの首都カンパラの『カリオキ・ショー』」
司会 松田素二(京都大)

昼食[12時35分~14時00分]

� まねる/混ぜる—ブリコラージュとしてのアート—
14時00分~15時40分 会場B301教室
[個人研究発表]
中村博一(文教大)「ハウサ音楽の現在:ホームビデオとヒット曲」
金子穂積 (音楽ジャーナリスト)「アフリカのヒップホップ」
阿毛香絵(慶応大)「ダカールにおける若者文化とイスラーム神秘主義:都市における文化・宗教とアイデンティティー」
品川大輔(名古屋大)「シェン(BantuG40E)の文法的混質性に関する記述言語的スケッチ」
司会 小田亮(成城大)

� 魅せる/妬む—商品、誘惑、フェティッシュ—
15時50分~17時05分 会場B301教室
[個人研究発表]
慶田勝彦(熊本大)「ポップアート化する祖霊:ケニア海岸地方の祖霊木彫Vigangoの盗難をめぐって」
石井美保(一橋大)「ヒンドゥー神としてのマーメイド:ガーナにおけるマーミ・ワタの図像と信仰をめぐる謎」
須田征志(名古屋大)「呪物としてのヒョウタン」
司会 佐々木重洋(名古屋大)

� ポップアフリカのディープな残響
17時15分~18時 会場B301教室
[総合ディスカッション]
会場全体+発表者+司会者+特別コメンテーター(ウスビ・サコ・長島信弘・阿部年晴(予定))
司会 近藤英俊(関西外国語大)

[閉会挨拶] 総合司会 鈴木裕之(国士舘大)

映画・写真セッション
11月15日・16日随時 会場B304教室(休憩室兼用)
川瀬慈(日本学術振興会)"Osho Martial Arts Club in Gondar", "Dancing Addis
Ababa", その他
古川優貴(一橋大)"rhythm:YouTube、手話、ケニアの聾学校"
岡崎彰(一橋大)「アフリカ系特選ようつべ映像集」
詳しくは会場にある「Pop Africa AV Program」のチラシをご参照ください。
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ナンビクワラ族の携帯電話、写真の枚数

10月1日の夕刊(朝日)から、2点。

レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』の読者なら耳に親しい名前、ナンビクワラ族のみなさんの写真が掲載されていた。儀礼の格好をしながら、うち1人の若者が携帯電話をいじっている。画面を見つめている。半裸体で。しかもかれらの保護区には、電波は届かないのだそうだ。電波が通じるところまでは車で1時間ほど離れているのだという。

写真家の蜷川実花の談話体の文が載っていた。「とにかく写真漬けの日々」だという彼女、年間に13万枚くらいの写真を撮るのだそうだ。1日、約360枚、毎日。それを13年間やってきた。気が遠くなる。

そういえば、どこかで聞いた話。森山大道によると、コンパクトカメラ(フィルムのもの)はだいたい2000本撮ると壊れるらしい。1年で2000本撮り、壊れるころに写真集1冊分のスナップショットが残る。

ぼくのコンパクトカメラは巻き上げ機が壊れたけれど、修理に出したのでまだまだ使える。まだ100本も撮ってないだろうな、たぶん。これから挑戦だ。