Thursday 30 October 2008

ヴァレリー/クレイン

きょう10月30日はポール・ヴァレリーの誕生日(1871年)。そしておなじ年の11月1日にはスティーヴン・クレインが生まれた。

使用言語もスタイルも思考の癖もまるでちがうこの二人の詩人について、星座の影響を語るのはむずかしそう。だが、このところ、夭折したアメリカ詩人クレインの天才に衝撃をうけつづけているので、きょうは彼の短い詩をふたつ、ここに紹介しておく。いずれもタイトルはない。


おれは砂漠を歩いていた。
そして叫んだ。
「ああ、神よ、私をここから連れ出してください!」
声が聞こえた。「ここは砂漠ではない」
おれは叫んだ。「ええっ、でも----
砂と、熱と、空っぽの地平線」
声が聞こえた。「ここは砂漠ではない」


風に乗ってささやき声が聞こえた。
「さよなら! さよなら!」
小さな声が暗闇の中で呼んだ。
「さよなら! さよなら!」
それでぼくは両腕を前にさしのべた。
「ちがう----ちがう----」
風に乗ってささやき声が聞こえた。
「さよなら! さよなら!」
小さな声が暗闇の中で呼んだ。
「さよなら! さよなら!」


ほんの数行で、なんという驚くべき世界。クレインについては全訳詩集を準備しようと思っている。どこか出してくれる出版社が見つかればいいんだけれど。見つからなかったら、新聞紙の大きさの紙の表裏に印刷したものを、自分で作ってみようか。

みんなが忘れたころにひょっこり完成するかもしれないので、お楽しみに!