Monday 25 February 2013

あいうえお俳句

即興あいうえお俳句、ひさびさの新作です。電車に乗ってるあいだ、一気に書きました。ばかばかしいけど、あとになって読み直すと、そこにも歴史あり。その日ごとの出来映えにははなはだしい差がありますが、推敲するのもおもしろくない。ご笑覧ください。

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朝焼けに炎を借りて焚く命
椅子から転げ落ちたまま小犬が眠つてゐる
有為転変地球の果ての蒙古斑
永劫の愛を誓ふは映像家族
恐ろしい速さで雲が飛んでゆく

環状線が頭をきつく締め付ける
近海漁業そぼふる雨の放射能
クリスマスといふ名のマスに参加したい
賢なるかなお笑いひとすじジャン=ポール
交渉なんて食事の後のだまし討ち

坂の上塗られた空の同心円
詩歌悲歌挽歌さざんか道の声
酔狂もteetotalの副作用
性格こそ忠犬そのもの鴨そのもの
そつくりこのまま海の広さを飲めるなら

大気圧形状記憶のステンシル
誓いも新たにこれから土地を耕さう
「つい出来心で」そうさすべてはhappenstance
定型詩に憧れ東の窓を仰ぎ見る
遠くまで行かう陶酔もなく問いもなく

泣き寝入りの子犬夢で吠えるよわんわんわわん
新潟湿原忍耐力のあいうえお
縫物針で心を縫つて袋詰め
猫にまでお礼をいいますこの晴天
濃霧を抜けると不意打ちだつたnorthern lights

歯が痛いのでけふは帰らう春の海
光あれと叫んで懐中電灯ともす小学生
福引きと福笑ひによる歴史観
変形文法で視界の歪みを矯正せよ
本格的な狩猟には精霊の助けと持久力

マイスター・エックハルトにちなんだハムエッグ
みけんに皺よせ唇嚙んで「諾」といふ
無闇にガムを嚙むなよ歯がバキバキ折れるぞ
メンソレータムまぶたに塗つて深夜の中央道
もういちど白砂に潜れ白紙に潜れ

焼け野原世界の終末のりこえろ
夕方から生ずる心のひびきを録画せよ
洋上の鳥緯度に抗ふ筋、骨、眼

らばの反逆帝国解体奴隷の「怒」
倫理なく理解なし理由なく由来なし
留守番とバナナ一房不可分契約
恋愛的連弾ダダとダダとのダダダダダ
楼閣が崩れてゆく老人は死んでゆくと朗唱せよ

鰐の涙の真実嘘と真の弁証法

毎日新聞2月25日(月)

本日の毎日新聞に「新世紀世界文学ナビ」エドゥアール・グリッサン篇を書きました。話題のシリーズ記事です。グリッサンのすべての作品を、ぜひ読んでください!

Sunday 24 February 2013

分藤大翼さんの写真を見ながら

23日(土)、馬喰町のArt&Eatで映像人類学者・分藤大翼さんの写真展イベント第3夜「あかるい森」に出演しました。

といっても、ぼくは聞き役。カメルーンのバカ族をとった彼の作品「Wo a bele」をみんなで見た後、いろいろ興味深いお話をうかがいました。

ナレーションがほとんどないビデオ映像、最高。写真もすごくいい。ごはんもおいしかったし(アフリカ料理のフードボックスつまりお弁当)、最後には歌手の松田美緒さんが飛び入りで昨日まで行っていたカーボ・ベルデの歌を披露。観客は3チームに分かれて、それぞれ別リズムの手拍子。楽しかった。

「おまえが日本という森に帰ったら」というのが森の人々の別れの言葉の一部。そう、われわれはだれもが森の人でもあるのです。

だから、森を破壊し、森の生命を追いつめてゆくすべてに、きっぱりとノーをいいましょう。

3月7日には松田美緒さんとパーカッションの渡辺亮さんが登場します!

読売書評#29

堀江敏幸『余りの風』(みすず書房)。2月24日掲載です。

批評家としての堀江敏幸の良さが十二分に発揮された本。お勧めします。


Wednesday 20 February 2013

3月11日、「光のしずく流れる春の川」

あれから2年が経とうとしています。少しずつ続けてきた、われわれの小さな活動ですが、3月11日には高樹町のレイニーデイ・ブックス&カフェで、朗読劇『銀河鉄道の夜』上演を中心とするチャリティー・イベントを開催します。すでに予約受付がはじまっています。

http://www.switch-pub.co.jp/rainyday/042131302.php

レイニーデイでの開催は、たぶんこれが最後。心をすませて、われわれの社会の変えなくてはならない部分を、もういちど考える機会にしたいと思います。

東京国際文芸フェスティバル

3月1日〜3日にかけて東京のいろいろな地点をむすんで開催されるイベント、東京国際文芸フェスティバルに参加します。そう、われわれの朗読劇『銀河鉄道の夜』の一部を上演します。2日(土)の夜、SuperDeluxeで会いましょう!

http://tokyolitfest.com/


Tuesday 12 February 2013

『abさんご』書評

黒田夏子『abさんご』書評が、読売オンラインで読めるようになりました。ごらんください。

http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20130205-OYT8T01064.htm?from=tw

Monday 11 February 2013

修論しめきり

修士論文提出日まで、いよいよあと5日。みんな苦しんでます。

今年のぼくの担当は3名。中村絵美はヨーゼフ・ボイス論。松本晃次郎は広告における「エゴフーガル」。ダニエル・ギマランイスはエクストリームなゲーマーたちのサブカルチャー論。いま最後の直し段階。たぶん寝ずにがんばっていることでしょう。

絵美ちゃんには、昨年のドイツ旅がすごく生きてきたし、こーちゃんは学部生時代にはまったく縁がなかったジラールやバルトにもよくとりくんで、新鮮な議論を作りました。ダニエルはドキュメンタリー『実存ゲーマー』をとりあえず完成させ、ぼくは付随する論文を待っているところです。

そして今月末には大学院の2期入試。新しい仲間たちが待たれます。

われわれの大きな年中行事であるImaginAsia 2013 についても、いろいろ調整中。おそらくふたたび台湾をめざすことになるでしょう。

小さなボートだけど、みんなで乗りこんで、いつも新しい島を探しています。将来加わってみようという人は、いつでも研究室・ゼミ見学に来てください!


Saturday 9 February 2013

レポート提出時の心がけ

某大学の期末レポートを郵送で提出してもらったら、ちょっと気になりました。

1)しめきり日を「必着」と指定していたのだから「消印有効」ではありません。
2)宛先には姓名だけでなく、せめて「様」くらいつけましょう。
3)差出人の住所氏名を必ず記すべきです。
4)「レポート在中」とかなんとか表に適当に書いておいてくれるとよかった。
5)カバーレターというか送り状みたいなものをレポート本文以外につけるとよかったね。ちゃんとした紙じゃなくても、附箋程度でいいから、ひとこと。
6)A4の紙に印刷したら、その大きさの書類封筒を使いましょう。三つ折りにして、さらにそれを7対3くらいの二つ折りにして出されると、ひろげたときには山あり谷あり。
7)料金不足は困ります。

以上、あえていうほどのこともないと思っていたこっちがまちがっていたみたい。すべてちゃんとしていたのは2割くらいだったことに、ちょっと・かなり・相当驚き。

特に上記の3は、絶対必要ですよ。名無しでは困る。4人ばかり、いましたよ。

ではみなさん、よい人生を!

Thursday 7 February 2013

「すばる」3月号

「旅ときりぎりす」第3回は「クック諸島」です。ぜひごらんください!

神戸から帰って

2月4、5、6日の三日間、神戸大学文学部に「チカーノ文学入門」の集中講義に行ってきました。英米文学、独文、仏文、言語学、西洋史、哲学など多様な専門の学部生・大学院生が20数名集まってくれて、ディスカッションも活発。毎日、朝8時50分から夕方18時30分までの長丁場でしたが、ぶじ終えることができました。

文学部は建物が新しくなったばかり、しかも神戸全域を見渡せるその絶景に、ほんとにびっくり。なかでも百周年記念館の「額縁」と呼ばれる吹き抜けのピロティからの絵のような構図には、思わず感嘆の声をあげました。

参加してくれた学生のみんな、楽しい時間をありがとう。そしてお招きいただいた英文の芦津かおりさん、山本秀行さん、独文の増本浩子さん、日文の樋口大祐さんをはじめ、暖かく迎えてくださったみなさん、ほんとうにありがとうございました! またぜひうかがわせてください。

5日の夜にはみなさんのご好意で『ろうそくの炎がささやく言葉』(勁草書房)朗読会を開かせていただきました。この東日本大震災被災地のためのチャリティー本の朗読会はこれまで各地で開催してきましたが、読み手がひとりの会は、これが初めて。以下の作品を読みました。

谷川俊太郎「ろうそくがともされた」
岬多可子「白い闇のほうへ」
新井高子「片方の靴」
山崎佳代子「祈りの夜」
管啓次郎「川が川に戻る最初の日」

お客さんは30名ほど。最年少のタマちゃんは4歳。朗読後の質疑応答は昨夏ベオグラードでご一緒した楯岡求美さん(ロシア文学)と増本さんからいい質問をいただいて、充実したひとときになったと思います。

神戸。次回はきっと六甲山に登りたい、登ります。



Saturday 2 February 2013

読売書評#28

黒田夏子『abさんご』(文藝春秋)。2月3日掲載です。

おめでとう、多和田葉子さん、松家仁之さん

1日、読売文学賞が発表されました。小説部門は多和田葉子『雲をつかむ話』と松家仁之『火山のふもとで』。おめでとうございます。多和田さんは押しも押されもせぬ同世代の大作家ですが、お会いしたことのない松家さんは最初の小説での受賞。ぼくとおなじく1958年生まれ、50歳を過ぎてから会社を辞め小説を書きはじめたというところに、勝手に親近感を抱いています。(ぼくは会社を辞めていませんが50歳を過ぎてから詩を書きはじめたので。)

一方、「随筆・紀行賞」は今年は空白。改めていうまでもなく「賞」とはすべて水物なので、いい作品がたくさんあったことは疑いませんけれど。

みなさん、ぜひ上記の2作品を読みましょう。

次世代キンドル?

キンドルの改良型で、いますぐにでも欲しいもの。それは防水キンドル! それがあればお風呂の中でも読めます、風雨のバス停でも。ぜひ実現してください。

野谷文昭さん

きょうは東大文学部で野谷文昭さんの最終講義。階段教室、満員。松浦寿輝さんのときより多いくらいかも。この30年ほど、ラテンアメリカ文学研究を牽引してきた野谷さんにとってのふたりの特別な作家、ボルヘスとガルシア=マルケスを中心に、他の多くの人々の多くの作品が連想でむすばれ、間断するところのない90分だった。野谷さん、お疲れさまでした。そして今後のいっそうのご活躍を!

「水牛のように」2月号

ウェブマガジン「水牛のように」更新されました。ぼくの「犬狼詩集」は今回は4片。これで「時制論」64片の完結です(うち6片は「文学空間」に発表)。詩集にまとめますので、気長にお待ちください。