日本語の人生を語ってみると、英語にはないworldが現われてくる。
(リービ英雄)
チェーホフで好きだったのは、ワーニャ伯父さんでも桜の園でもなく、ブリヌイの話である。単数系はブリーンであると書いている人の文章を読んで、ああそうかと初めて気がついた。あの挽き割り小麦の甘さともちもちした弾力のおいしい薄焼きパンケーキを、たった一枚しか食べないなんてことはありえないので、複数形しか知らなかったのだ。
(中村和恵)
ほんとうに私は、どれがほんとうの自分だかわからない。読む本がなくなって、真似するお手本がなんにも見つからなくなった時には、私は、一体どうするだろう。
(太宰治「女生徒」)