Wednesday, 3 December 2008

増山たづ子写真展

新宿のコニカミノルタプラザで、増山たづ子さんの写真展「遺されたネガから」を見てきました。

行ったこともないのになつかしいものとなった徳山村の生活と情景が、ここにもまた、ここにもまた。先月、中国でダムによる記憶の破壊の話をしたばかりだったので、なんともジンと来ます。

名古屋テレビ制作の、たづ子さんの姿を追った短い番組を見て、ついほろり。そして知らなかった新聞記事をいくつか読んで、どれもおもしろかった。たづ子さんが愛用していたピッカリコニカ開発者の方の、「技術者冥利につきます」という言葉。それはそうだろうなあ。またたづ子さんの甥にあたる、村の小学校の先生で児童文学者だった方が語る、カメラと出会うまえのたづ子さんの、病にふせりがちな暗い時代の姿にもハッとさせられます。

たづ子さんのあのすばらしい明るさは、写真と出会ってからのものだったとのこと。男手がないと村の共同作業に参加できないため、戦後ずっと他の村人たちに負い目を感じながら暮らしていたにちがいない、ということ。また、たづ子さんが戦争で夫を奪われ、ダムにふるさとを奪われという面ばかりが報道では強調されるけれど、村の女たちは概して戦争のときはよろこんで男たちを送り出し、ダムによる移住をよろこぶ人も多くいたのであり、マスメディアの物語をそのまま信じてはいけないという指摘も、もっともだと思いました。

そうしたすべてをひっくるめて、この、ときにはピンぼけの写真がもつ意味の、大きさに打たれます。来週9日(火)まで。新宿を通る機会があったら、ぜひ立ち寄ってください。会場は東口、高野の4階です。