写真美術館収蔵品展「ヴィジョンズ・オヴ・アメリカ」の第3部、「アメリカン・メガミックス」へ。通しチケットをもっていたのに第2回「わが祖国」は結局見逃し、第3回も最終日になって、やっと。
さすがにすごい。大家たちの名作が、惜しげもなく並べられている。入口の、ウィリアム・クライン、ロバート・フランク、リー・フリードランダーに、まず見入る。都市のスナップは、以後何をどうとっても、かれらの文法の中に収まる。三人ともすごいが、ぼくの趣味はフリードランダーの整然としたコンポジション感覚。
ギャリー・ウィノグランドやダイアン・アーバスといったモンスター写真家たちももちろんいいが、われらが北島敬三の若いころの代表作であるニューヨークの連作は、やっぱり強烈に輝いている。DC系に北島さんを先生としてお迎えしていることの幸福を、みんな噛みしめてほしい。アキバの片隅で、あの少人数で授業を受けられるんだから! 写真を見て、見て、見まくるという経験を、ぜひ。
ぼくがいちばん好きなのはリチャード・ミズラックの砂漠写真で、これにはしばし没入。やっぱりむちゃくちゃにかっこいい。クロモジェニック・プリントの色合いの鮮やかな奇妙さとともに、恐ろしい魅力。
そして今回の大きな収穫は、ヴェトナム戦争を取材した戦場の写真家たちの作品。石川文洋、岡村昭彦、沢田教一という3人の写真(きわめて有名なものもいくつも含まれている)を見て、いったい戦場で何を思いどんな日々を送っていたのか、想像できないことを想像。なんという生き方だろう。
ヴェトナム戦争はぼくの小学生のころ。小学校の壁に貼られる「小学生ニュース」的な壁新聞に、ときおり戦場の写真がとりあげられていた。いまでも覚えているのは、アメリカ兵が射殺したヴェトコンの死体を靴で踏みつけながら、狩りの獲物のように勝ち誇っている写真。キャプションに、「このあとアメリカ兵は銃剣で死体の腹を裂き、肝臓をとりだして生で食った」とあったのに、強烈な吐き気を感じた。
ニコラス・ニクソンの「ピープル」連作もいい。こういう写真は、つねに見ていて楽しい。それから2階にゆき、日本の新進作家展vol.7「オン・ユア・ボディ」を見たが、その中では朝海(あさかい)陽子の「自宅で映画を観る」人々をとったシリーズが、特に気に入った。これもクロモジェニックの大きなサイズのプリント。朝海さんは川崎市在住だそうだ。生田のキャンパスにお招きする機会を作れないものかな、と思った。