木曜日、アキバにむかう前に銀座にゆきギャラリー・コヤナギで内藤礼さんの新作展。
色の現われ。白いキャンヴァス上に、淡いピンクを塗り重ねてゆく。「あわい」、つまり存在の境界、はざまを主題としてきた彼女が、絵画にむかうとこうなるのか。電熱器が生む上昇気流にゆれる細い糸が、1本。染められた布も、2点。他はすべて大小の絵。
彼女がたとえば夜明け、物事の輪郭が現われ色彩が現われるころに強く興味をもっていることは、まえからわかっていた。だが夜明けに最初に現われる色は、青。ここではピンクが選ばれている。系統としては、赤の側。つまり酸化の色、燃焼の色、生命の色、生命の反映の色。
慌ただしさの中を30分ばかり、たったひとりで、彼女の絵にむきあうことができた。内藤さんの作品にはこれまでテクストの英訳というかたちで何度かかかわってきたが、直島にはまだ行っていないのが残念。いちどは瀬戸内海に行かなくちゃ。瀬戸内海! その驚くべき地形も名前もしょっちゅう思い浮かべながら、現実の瀬戸内海に、いったいいつから触れていないことか。