ヤノマミのドキュメンタリーで、もうひとつ興味深かったのが、動物の胎児の扱い。
大猟のイノシシの腹から取り出された胎児を、子供たちがうれしそうにさわり、見ている。理科の実物教育みたい。体長2メートルを超すバクからも胎児が見つかった。獣の肉をよろこんで食べるかれらだが、胎児はけっして食べないという。
これがヒトの新生児に対する態度と、どこかつながっているような気がする。新生児は、その段階では、精霊。獣の胎児も、それは「精霊段階」であって、「肉」というカテゴリーには入らないのではないか?
不思議だ。
しかし、そんなかれらも今後数年のうちに、Tシャツを着たりサンダルを履いたりするようになるのかもしれない。そうなってほしくない。あのままでいてほしい。あの暮らしを続けてほしい。そして、思う。あの番組を見たからといって、絶対に、絶対に、あそこに行こうなんて思ってはいけない。テレビの取材も、二度と行ってはいけない。
限られた環境で、孤立して生きる人間集団の究極の選択の姿。そこから得られる教訓を、われわれはどう生かすのか。ところがそんなかれらの広大な土地にも、金を探す者たち、牧畜のために土地を奪う者たちがどんどん流入しているらしい。そしてよそものが伝える伝染病。コロンブス以来の民族破壊が、いまも続いているわけだ。