木曜に話した「作文の心がけ」をまとめておきます。いちおう書評の場合を念頭に。
(1)手持ちの資源では書けない
どんな短い文を書くときにも、必ず「ちょっと調べる」ことを心がけたい。たとえば最初の課題のときは、著者(鷲田清一さん)の背景を想像するために、「現象学」や「メルロ=ポンティ」について、ちょっとだけでいいから何かを見てみる。それでぜんぜん結果がちがう。
(2)読む時間を確保する
あたりまえのことだけど、読まずに書評は書けない。とはいっても、本を読むときに最初から最後まで一貫した強さで読める場合は、そうはない。2時間なら2時間で読むと決めて、濃淡をつけた読み方をするのもひとつの方法。あるいはダイビングのように。本がひとつの岬なら、その周囲の海をぜんぶ知ることなんて、とてもできないだろう。丘に立って、ポイントを3つ選ぶ。そのポイントごとに、5ページなら5ページ、潜水し、熟読する。5ページなら5メートル。10ページなら10メートル。もちろん、深く潜れば潜るほど、学べることは大きい。慣れないうちは、1ページ(1メートル)であっぷっぷ。でも必ず慣れてゆく。ポイントも増やせる。
(3)書く前の儀式
いざ書く時には、ちょっとした儀式をする。自分がお手本だと決めている著者の文章を、2、3ページ読んでから書く、ということ。するとリズムとか温度とかが整ってくる。
(4)一晩寝かせる
書き終えた文を必ず一晩寝かせて、翌朝「他人の目」で読んでみる。徹底的に批判的に。気に入らなければ、できそこないの茶碗のように床に叩きつけて割る。そしてもういちど最初から。何度でも、最初から。
ということで、次回もよろしく。