Wednesday, 21 May 2008

早稲田の夜

20日、火曜日。早稲田の文学部+文化構想学部の「カリブ海地域文化論」に、ゲストとしてフォトジャーナリストの佐藤文則さんをお迎えし、ハイチの現代文化におけるヴードゥーの位置についてのお話をうかがった。

さすがに20年におよぶ深い取材のエッセンスは、すごい迫力。思わず膝を打つこと(実際に打つわけではない)の連発。この不思議なカリブの島国に対する好奇心が、猛然とかきたてられた。

佐藤さん、なんといっても写真の感覚がすばらしい。別にアートをめざす写真ではなく、「報道」を第一義にするものだということは誰よりもご本人がおっしゃっているが、それにしても色も造形感覚も、日本で「報道写真」の名の下に日々新聞その他で流通しているものとはぜんぜんレベルがちがう。美しい、そして、恐い。ハイチとはなんという苛酷な社会かと、言葉を失う。

とりわけ、ハイチ国内での巡礼の聖地をとらえた写真は、圧倒的。信仰って何、かれらが求めているのは何と、答えようのない疑問がこみあげてくる。

終了後、聞きにきてくれた早稲田法学部の立花英裕さんや学生のみんなと連れ立って、近くの香港料理店「太公望」へ。

ここは最高。無愛想な店主がひとりでやっていて、料理にすごく時間がかかる。時間がかかるから、いろいろ注文するのをいやがる。いやがりながらも、こっちが注文したものの微妙な重なりを正して(鶏が重なるから豚にしたらどうだ、とか)さりげなく助言をくれる。

あの独特な、怒っているのかと思うような無愛想さに、学生時代の香港人の友人たちを思い出して、ついニヤニヤ。じつにいい店だ。

途中、ぼくが一件用をすませるため外に出たとき、店がいっぱいだったので、外からちらりと3人連れで店内をのぞいた人たちが、あきらめて帰るところに遭遇。でもあの人は! いま早稲田の大学院に通っているという、あの有名女優そのヒト。

これでまた、この店に通う理由が増えたような。