電車の中でサントリーの発泡酒「金麦」の吊り広告を見て、感心した。誰か知らない女優の顔にKIN GIの文字があしらわれて、「む」の音にあたる部分が唇になっている。省略されている文字は「M」、つむった唇が子音を表す。日本語で、この並びだと、「きんむぎ」とたとえひらがなで書いても、「む」の母音をちゃんと発音する人は割合少ないはずだ。つまり、Mだけで用は足りている。この議論は、広告企画の会議でちゃんと出たにちがいない。さすがサントリー宣伝部。
世の中で感心することは、ほんと、枚挙にいとまがない。昨晩はテレビの「情熱大陸」で、ブックデザイナーの祖父江慎さんがとりあげられていた。まちがいなく、世界のブックデザインの最前衛。めちゃくちゃなことを次々にやっている! どういうことをやっているかはそれぞれ調べてもらうことにして、昨日の番組でエピソード的に感動したことを3つくらいにまとめておこう。
(1)蜘蛛を見かけるとそれを手にとって遊び始めるようす。
(2)近所のタバコ屋までスキップでタバコを買いに行くところ(祖父江さんは1959年生まれのおじさん)。
(3)漱石の『坊ちゃん』のあらゆる版を集めていること。これでデザインによりおなじ作品がいかに表情を変えるかがわかる。
まさに天才の日常。驚き、あきれ、感動しました。
DC系の学生からも、いつか広告やグラフィックデザイン、ブックデザインといった分野で活躍する人が出てほしい。料理でもいいけど。いよいよ第2期入試の月になった。