Wednesday, 6 February 2008

「みすず」2008年1・2月号

みすず書房のPR誌「みすず」は恒例の「読書アンケート」特集。2007年のあいだに読んで印象に残った本をいろいろな人があげていて、ぼくも参加してます。もうずいぶん、毎年書いてる。2001年ごろからか?

ぼくがあげたのは以下のとおり。いずれも「翻訳文学」の枠から。

(1)ギヨーム・ド・ロリス/ジャン・ド・マン『薔薇物語』(篠田勝英訳、ちくま文庫)、(2)ソル・フアナ『知への賛歌』(旦敬介訳、光文社古典新訳文庫)、(3)シルヴィー・ジェルマン『マグヌス』(辻由美訳、みすず書房)、(4)チママンダ・アディーチェ『アメリカにいる、きみ』(くぼたのぞみ訳、河出書房新社)、(5)高銀『いま、君に詩が来たのか』(青柳優子ほか訳、藤原書店)

選んだ理由は、ぜひこのすばらしい小冊子を入手して、読んでみてください。

いろいろな人があげている本を見ると、知らないものも多く、猛然と読書欲に火がつく。でも時間がなくて、ほとんどはそれっきりなんだけどね。たとえば栩木伸明さんがあげている松岡利次『アイルランドの文学精神』とか、松野孝一郎先生があげているダグラス・ホフシュタッターの新作 I am a Strange Loopとか、ぼくが哲学者・多言語使用研究者のひとつの理想型だと考えている冨原真弓さん(シモーヌ・ヴェイユの研究者にして「ムーミン」の翻訳者)があげる今村・塚原訳によるソレル『暴力論』とか、文章道の先達・大竹昭子さんがあげる十文字美信『感性のバケモノになりたい』などは、すぐに入手しなければ救われない。

日本語世界は、すごいよ。すごい本はたくさん出てるんだ。ただ、それが根付いてゆかない。また、他所の言語に反響を作り出せない。そのへんを少しずつでも克服する方向に、作業を進めよう。ひとりひとりの力は限られている、あまりにも。動きは、すべて、連結が作り出す。