「フリーランス語学教師」であるわが友人、黒田龍之助さんの新著が出た。『語学はやり直せる!』(角川ONEテーマ21)。勇気とやる気を与えてくれる、クールな本だ。
クールというのは、著者の立場。どうして語学なんかやってるの? と聞かれたら、迷わずこう答えればいい。「だって、カッコいいから」! それ以外の目的なんて、ぜんぶ後からの付けたし。妙な実利主義とか、もっと妙な精神主義とか、もっともっと奇怪な教養主義とかには、著者はぜんぜん無縁だ。クールだと思ったから始めて、ずっとやってる。それでいい、たしかに。一時の情熱ではなく、冷静な持続。それを著者はこう表現する。「情熱的な北風ではなく、冷たい太陽が目標」。さすがは江戸っ子ロシア語学者!
語学の勉強のためのヒントとクールな態度への誘いはふんだんにもりこまれているが、いちおうこっちも語学者であるぼくが共感しお勧めしたいのは「子供用の外国語辞書を書き写すこと」。これは確実に力がつく。そして、辞書を読むこと。とにかく発見につぐ発見の大航海時代になることはまちがいない。
そしてぼくにとっていちばん耳が痛かったのは、「語学のプロは整理整頓をする」。これがぼくにはできない。それが何より証拠には、かつての黒田研究室の整然と、わずか2部屋隔てただけのぼくの研究室の混沌を較べてみれば、明らかだった。すべての資料がどんどん行方不明になってゆくぼくの部屋。あらゆる必要品が指で合図するだけで自然に飛び出してくる黒田さんの部屋。
見習いたい。