Sunday, 10 April 2011

You are wrong, Mr. Nakasone!

きょうの「読売新聞」1面に中曽根康弘元首相の談話をまとめた記事が掲載されている。

「大津波を伴った東日本大震災は、『太平洋国家』である日本にとって宿命的な要素を持つ大災害だった。」

これはそのとおりだと思う。ところが次の段落で、看過するわけにはいかない愚かな意見が堂々と述べられているのに唖然とした。

「文明に対する大自然の挑戦と日本人はいかに戦い、克服していったかを世界に見せる時だ。大自然の挑戦に負けてはならない。」

ちがうでしょう。「文明」(=人間世界)と「大自然」を対立の構図で捉えるこのような発想・修辞自体を、もう終わらせなければならない。そもそも自然は人間に挑戦しない。自然にとって人間世界は眼中にない。

ヒトは自然界の一部でごくつつましく、いつでも解消可能な人工物だけを使いつつ、他の動植物のみなさんの力を全面的に借りながら、ひっそりと住まわせてもらうべき存在にすぎない。

中曽根氏のここでの語法こそ、われわれが「負けてはならない」ものだ。発想は言葉に表れる。そしてヒトの行動にみずからしかるべき制限を課すのは、ヒト自身の言葉だけだ。

自然と「戦う」という発想を全面的に捨てよう。戦って勝てるわけがないでしょ。克服できる相手ではない。そもそも、ヒトにとって外在する「相手」ですらない。

20世紀を通じて列島をさんざん荒らしてきたのは、まさに「自然」を敵対視し「文明」の勝利をうたう、このような語法だった。さすがは元首相、というか。しかしあなたは根本的にまちがっています。