世田谷美術館の「12の旅」が終了間近。宇野澤くんやダニエラの熱烈な勧めにしたがって、かけこみで見てきた。「旅」をモチーフとしてまとめた、イギリス美術の世界だ。
すごい充実。栃木県立美術館、静岡県立美術館、富山県立美術館、世田谷美術館の共同企画らしいが、これくらいソウルにあふれた展覧会ができるんだから、ほんとにうれしい。学芸員のみなさま、ごくろうさま。生涯の思い出になる展示です。
そもそも、あまり点数が多すぎる展覧会は苦手なので、これくらいの規模で、ぼくには最大限。ほんとはこれでも一日ではとても見られない。コンスタブルやターナーを、ほとんど通過してしまったのが残念。うしろがみを引かれつつ。
お目当ては、もちろんアンディ・ゴールズワージーとデヴィッド・ナッシュ。アンディの、なんというすばらしさ。なんという偉大さ。自分と同年代にこれほどの偉大なアーティストがいることに、戦慄を覚える。ナッシュもとてつもないが、特に制作日記のかっこよさにはしびれる。かっこいいなあ。こんな風に生きたいなあ。
他には? ホックニーにとってのブルーの意味を改めて考えた(ホックニーくらい、通常の意味で「センスのいい」人はいない)。バーナード・リーチの強烈な魂を感じた(この人の生涯は追体験したい)。ヘンリー・ムーアも、いうまでもなくすごい。ベン・ニコルソンの旅のエッチングに新鮮な刺激を受けた。そして何より、健全な狂気を感じさせる、ボイル一家の異様な力。
そして、これまで視野に入っていなかった人では、アンソニー・グリーンの自伝的世界のおもしろさに見とれる。いちばん「文学的」ではあった。
2月はとにかく慌ただしくて、行こうと思っていた展覧会も、まるで行けずじまい。3月8日で終わる小島一郎(これは青森、同僚の倉石さんはわざわざ日帰りで行った)も高梨豊も必見だし、集英社のロビーでやっているという石川直樹さんの「最後の冒険家」展は、まだ間に合うんだろうか。すべてに十分な時間を費やすことはできないので、あるときは一瞥、あるときは凝視で行くしかない。それでも、「そのもの」にすぐそばで立ち会うことは、オブジェでも絵画でも、複製技術の典型みたいな写真でさえ、かえがたい経験をもたらしてくれる。
田中功起さんの個展と群馬での展示も、さしあたっての大きな課題。