Monday 2 March 2009

「情熱大陸」

テレビをほとんどまったく見ないぼくだが、日曜の夜にときどき「情熱大陸」を見る。するとびっくりすること、どきっとすることが多い。

先週は『こち亀』のマンガ家、秋本治さんだった。33年にわたる長期連載を続けている『こち亀』、なんと一度もしめきりに遅れたことがないそうだ。そんなことがありうるなんて。徹底した取材による細部の丁寧さで根強い人気を誇っている『こち亀』を支える職業倫理というかプロ意識に、衝撃を覚えた。

すごいのは週にいちど、ネームを考える日。朝10時にひとりでファミレスにゆき、コーヒーを何度かおかわりするだけで、ひたすら物語の展開を考え、構図を決めてゆく。この過程ばかりは、アシスタントのみなさんにも手を出す余地がない。終わるのは午後7時。ありえない集中力、持続力。

今夜(3月1日)の放送は上田泰己(ひろき)さんという生命科学者。33歳。体内時計研究の世界的権威で、まだ大学院生のころ理化学研究所のプロジェクトチームのリーダーに抜擢されたという天才。にこにこしながらかたときも手を頭を目を休めないその働きぶりは、壮絶。たとえ30分しか寝られない日でも、その思考はフル回転だ。それでいて人付き合いがよく、サイエンスとはつねに人と人との交遊から生まれ育ち結実するものだという姿勢を、身をもって生きている。

研究者といっても理系と人文系では作業の進め方がまったくちがうが、この「やる気」はぜひとも見習いたい。「情熱大陸」のこの2回分は、録画しておいて、大学院オリエンテーションの日にでもみんなで見るべきだった。

来月からは、もう今年のサイクルのはじまりだ。修士2年目に入るみんなには、ともかく、論文か作品制作を完成させてもらわなくてはならない。猶予はない。がんばってくれ!

そういえばわれらが石川直樹さんも、かつて「情熱大陸」に出演したようだ。番組の初期。その回は見ていない。去年の桜庭一樹さんの回では、若島正さんとぼくも取材時にちらりとカメラに入ったのだが、その部分は番組ではカット。いま取り上げてほしいと思うのは、やっぱり田中功起さんだろうか。それとパリ在住の、フランス語と日本語で書く詩人、関口涼子さん。

こっちがしだいに歳をとっただけ、30代のみんなのパワーにふれて元気づけられることが多くなった。