Wednesday, 11 March 2009

ただ馬との関係だけが/石になったカメラたち

ジンガロの主宰者バルタバス氏への、中沢新一さんによるインタビューが「すばる」4月号に掲載されている。以下、引用。

「『仕事場で暮らす』のがジンガロの哲学です。もちろん日本公演中はホテルに宿泊しているんですが、基本的にジンガロの団員はテント劇場とその周辺で生活します。貧しい生活と言っていいでしょう。キャンピングカーで暮らすわけですから、最小限必要なものしか持つことができません。ジンガロでは芸術的な行為と日常生活との間に区別がないのです。本当の意味での財産は、馬との関係だけです。馬を所有することではありません。馬は個人ではなく劇団のものですから。馬との間に自分がつくり出した関係だけが自分の唯一の冨となるのです。これがジンガロの哲学です。馬が死んでしまったら、またゼロからスタートをしなければならない」

ジプシー生活を実践し、nomadic alternative を模索するかれらのすごさを知るには、このインタビューは必読。

「すばる」のこの号、今福龍太さんの『群島-世界論』をめぐる小特集(宮内勝典さんと巽孝之さんが寄稿)や石川直樹さんの新連載「横浜・寿町どやどや滞在記」、陣野俊史さんや堀江敏幸さんの連載と、きわめて充実している。

その石川さんの『最後の冒険家』にちなんだ展示を集英社ギャラリーで見てきた。石になった3台のカメラたちは、光の塊をひきつれて時間の外に出てしまったようだ。破損したゴンドラ(貯水槽を改造したもの)には、神田道夫さんの意志がいまも名残っているようだ。壮絶。神保町エリアに行ったら、ぜひ見てください。