Sunday, 29 March 2009

高崎旅行

またまた最終日になってしまったが、意を決して朝早く出て、高崎まで行ってきた。群馬県立近代美術館へ。田中功起さんの展示を見るため。

高崎は初めて。遠近の山々がふんだんに見えて、いいところだ。地形的には大好き。山腹を走る雲の影がいい。

田中さんのセクションは『たとえばここ最近の作品をすこし違ったかたちでみせること』と題されている。「たまたま小さな椅子を持ちながら深夜の森を5時間歩いた」(ポスター)ほかのある小さな部屋から見始める。おもしろい。「そうして群馬県立美術館にたくさんのたらいが落ちる」は、くりかえされる映像の音声がしだいに波音に聞こえてくる。ぼくが勝手に「食パン飛ばし」と呼んでいるシークエンスを含む大好きな「シンプルなジェスチュアとその場かぎりの彫刻」や、ちょっと不気味な「手の中のモンスター」など、楽しめるものばかりだった。

他に展示されていた数人の作家の中では、2点あった丸山直文さんの絵にひかれる。この感じ、知っているなあ、と思いつつ、何に似ているのかをいいあてることができない。ある絵は、絵を見たとき、ああ自分も描いてみたいなあ、という気持ちを駆り立てる。もちろん、なんの技もないので、できるはずがないのだが。しかしたとえばスポーツ選手の動きが、その模倣を誘発するように、絵だって音楽だって、そういうところがあるだろう。

奥の部屋ではヨーゼフ・ボイスにささげられた、荒川修作ほかの人たちの版画作品特集。さらに奥の部屋ではスタン・アンダソンによる大がかりなインスタレーション「東西南北 天と地 六合の一年」。これも充実していた。12月に公開制作をやっていたようだが、くればよかった!

森の倒木や、さまざまな動物の死骸を集めてきて、群馬県六合村の森のコスモロジーを再現しようとするもの。毛皮、骨、ミイラとなった動物たちが、ここで新たに場所を与えられて、美術館の無記の空間を、ふたたび森にしようとしている。かれらの霊をなぐさめる祭壇。木々が強い。

六合は「くに」と読むそうだ。まさに四つの方位と上下が加わった、六つの方位線が交錯する地点。それがクニ。拾われた自然素材だけのこの「彫刻」は、いうまでもなくデイヴィッド・ナッシュなんかの試みにまっすぐつながってくる。(実際、アーティストはナッシュと親交があるようだ。)

そしてナッシュは、ルドルフ・シュタイナーを介して、ボイスに。こうしてアートの試みも、あちこちでやがてはすべてがつながってくる。やること、やられたこと、考えること、考えられたことが、人の手を離れたあとで、勝手に接続を探しはじめるのがおもしろい。