三宅美千代さん(早稲田大学)からのお知らせです。すごくおもしろそう!以下、ちらしの引用です。
日時 1月11日(金)16:30~
場所 早稲田大学文学部戸山キャンパス
33-2号館2階第2会議室
入場無料
IDENTITIES IN TOUCH: VIDEO ART FROM ITALIAN TERRITORY
イタリア・ヴィデオアートの現在
ヴィデオアートというジャンル、それも若い世代の作品となると、イタリア国内でもこれまで十分に分析、議論されてきたとは言えない。60年代から80年代にかけてのイタリアにおけるコンテンポラリー・ヴィジュアルアートは、アルテ・ポヴェラ、フルクサス、コンセプチュアル・アート、環境芸術(environmental art)、ランド・アートの影響を強く受けたが、この時期にヴィデオが作品に用いられることはあまりなかった。イタリアでアーティストが視覚表現の探究のためにヴィデオの使用を本格的に模索しはじめたのは、90年代に入ってからのことである。
現在では、ヴィデオは多くのアーティストにとって特権的なメディアのひとつとなっているが、その意図や表現方法はじつに様々である。それゆえ、今日のヴィデオアートをめぐる状況を正確に理解把握するのは難しいが(私たちは必ずしもそうする必要はないと考えている)、そうしたなかで、ドグマにとらわれない自由なやり方でヴィデオに取り組むアーティストらの手により、インパクトある作品が次々とつくり出されていることは驚くべきことである。若い世代の作家は、ヴィデオというメディアをすっかり自分のものとして使いこなし、きわめてパーソナルな切り口から現象に深く入り込んだり、リアリティーを追究したり、身近な環境との関わりをもったりしている。
この展覧会は、イタリアを拠点に活動する若手ヴィデオアート作家8名の作品を取り上げる。Francesca Banchelli, T-Young Chung, Stefania Galegati, Chiara Guarducci, Yuki Ichihashi, Nicola Martini, Olga Pavlenko, Robert Pettenaは、2004年以降活発に作品を発表し、これからの活躍が期待されている1970年代から1980年代生まれの若いアーティストである。この8名には、イタリアで生まれ、教育を受けた人たちのほかに、海外からやってきてイタリア周辺に住んでいる人たちも含まれるが、みなイタリアのギャラリーと仕事をしたり、イタリアのアート・アカデミーで学んだり、イタリアと縁が深い。とはいえ、彼らの作品は特定の文化的、政治的立場を共有するものではない。アーティストたちは、文化的ルーツや背景を模索することよりもむしろ、現実とのかかわりのなかで生じるパーソナルな経験に注目し、思い思いのやり方で作品化することのほうに関心を寄せているようだ。
したがって、作品を特定のアイデンティティーや概念と結びつけて抽象的、還元的に語ることは避けなければならないと知った上で、もしイタリアで活動するアーティストたちの作品になんらかの共通の特徴を見出すことができるとしたら、それはパーソナルな題材を作品化する際の美学、つまり視覚性、ポエジー、形式面への関心において見出されることになるだろう。ヴィデオは、作家の形式的、言語的、美学的探究に応じて、じつに多様な方法で用いられており、イメージの構造や表象可能性に関する私たちの理解を深めてくれる。
このイベントが、多様な表現のあいだに生じる対話やダイナミックな関係性を体験する場、ヴィデオアート表現の新たな可能性を発見するための契機となることを願っている。アーティストたちにとって、ヴィデオは自己発見の道具であるのみならず、自分と世界を結びつけるための手段、モノや時間/空間とのかかわりを構築するための手段になっている。静かに物質をまなざしつづけるカメラは、アーティストたちの延長された器官となり、それを通じて彼らは世界を知覚する。その意味で、これらのヴィデオ作品は、「触れること」の探究なのだ。物質性こそが彼らの表現の核にあり、観るものの心に問いを残す。