これは「学魔」高山宏さんが紀伊國屋書店のサイトで連載しているウェブ書評のタイトル。現代日本の孤高最大の英文学者が発するこのひとことに、戦慄せずにいられる人はしあわせだ。「読んで生き、書いて死ぬ。」彼の覚悟に比べたら、われわれは誰も何も読んでいない。
そのコーナーで高山さんが『秘密の動物誌』(ちくま学芸文庫)について、鋭利かつゆったりとしたひろがりのある書評エッセーを書いてくださったのを、友人が教えてくれた。これはほんとうにうれしい!もちろん、それは二人のカタロニア人原著者の栄光なのだが、翻訳者という名の代書人だったぼくとしても、それなりに非常にうれしい。これで、「豆本」的体裁の文庫本として生まれ変わった本書が救われた。
高山さんは原著者二人の「制作ノート」のためだけにでも、この本は買う価値があるとおっしゃっている。かといって、みんな、そこだけ立ち読みですまさないでくれよ。ひとつひとつの写真のバチバチと火花が散るほどのおもしろさは、それでは味わえない。ぜひ机の上に一冊、並行世界への扉として、この際そろえておこう。
『秘密の動物誌』につづいて、高山さんの書評はすでに田中純さんの出たばかりの『都市の詩学』(東京大学出版会)も取り上げていた。これは畏怖すべき書物で、ぼくにとってはクリスマスの宿題、熟読しなくちゃ。ぼくもせめて「少しだけ読んで生き、少しだけ書いて死ぬ」気持ちを持ち続けようと思う。
紀伊國屋書店のこの「書評空間」、充実している。旅と文章の達人・大竹昭子さんも書いている。在野の哲学者として充実した仕事を重ねてきた中山元氏も書いている。印刷媒体とちがって長さの制限にしばられないのがいい。ぼくも十年前、「カフェ・クレオール」でやっていた「コヨーテ歩き読み」のようなウェブ書評を、そろそろ復活させようか。