13日の金曜日、ハイチのパーカッションと舞踊のグループ、マカンダルの公演を見てきた、というか、参加してきた。場所は草月ホール。マカンダルとは18世紀ハイチの黒人反乱の指導者。けものに姿を変えて神出鬼没、支配者である白人たちを恐怖のどんぞこに陥れたとされる人物だ。
グループは1973年にハイチの首都ポル=オ=プランスで結成され、81年にニューヨークに拠点を移した。ヴォドゥ教の儀礼をモチーフにしたパフォーマンスのショー。開演前、舞台に作られたヴォドゥのおどろおどろしい祭壇や舞台中央の柱(ポトー・ミタン、神の依り代にして宇宙樹、大蛇がまきついている)にびっくり。
最前列に陣取っていたため、出演の機会が多かった! リーダーのフリズネル・オーギュスタンが叩く太鼓を、誘われて叩かせてもらい、ついでトランスに入った(ふりをしている)女司祭の洗礼儀式(バラの花やハーブを水の入った桶でもみつぶし、その水でこちらの顔や髪や体を洗ってくれる)のために舞台上へ。さらに、死神バロン・サムディ(土曜日男爵)のお通夜のパフォーマンスでは、顔を白く塗られ盛装でよこたわっているバロンが組んだ両手に、こちらの小指をからめて握手し、バロンの復活を願うという仕草もやらされた。それからしばらく舞台上で踊っていたため、出演時間はのべ5分以上。何をやってるんだか。
おかげで、舞台を見にきていた友人・小沼純一さん(音楽評論)が発見してくれて、終了後は一緒にみんなで乾杯。まずは嘘っぽくも楽しい「東京の夏」ハイチ篇でした。
今回の公演には、ハイチのことをずっと追っている写真家の佐藤文則さんが関わっているらしい。8年ほどまえに初めてお目にかかった佐藤さんには、この日はお会いできなかったが、彼は明治の文学部出身。「世界最初の黒人独立国」にして「西半球最貧国」である島国ハイチのことを、もう四半世紀にわたって追ってきた人だ。明治のみんなにはぜひ注目しておいてほしいセンパイの一人。
マカンダルのショーはまさに「ショー」だったが、それでもいろんなことを考えさせてくれる。これを「世界史」への糸口として最大限に使えるかどうかは、その観客だったこちらの心がまえにかかっているんだろう。
ハイチ! かつて一度だけ訪れたその国のことは、いつかまた書くことにしよう。