きょう(24日、月曜日)は、ワールドシネマ研究会の第2回。
旦敬介さん(明治大学法学部、ラテンアメリカ文学)をホストとして、亡命キューバ人のレオン・イチャソ監督による1996年作品(ドミニカ共和国)、『苦い砂糖』(Azúcar amarga)を見た。
90年代のキューバ、若者たちにはごくあたりまえの生活が許されない。末期症状を呈する熱帯社会主義の島国で、社会主義体制の優等生である兄はさきゆきのない未来にじっと耐え、はみだした弟はロックに人生を賭け、警官にめったうちにされ、絶望のあまりエイズ患者の血液をみずからに注射する。
兄弟の父親は精神科医だが、とても食っていけないので外国人観光客向けのホテルのバーでピアノを弾いている。これはすでに売春の一形態。
そして兄グスターボの恋人は、イタリア人の商店主に身をまかせ、やがては一家そろってできそこないみたいな筏でマイアミめざして出国する。
ポスト冷戦の世界構造の中、「観光」に対する「売春」以外に、貨幣経済に参加する方法のない島国の苦境が描かれる。
あからさまな反カストロ、反社会主義の作品だ。出国したキューバ人たちが集って作ったこのさびしいラヴ・ストーリーは、妙に公式的な断片のパッチワークのように見えながら、何か心に残るものがある。
驚くべきは、この映画が作られて十年以上経っても、まだカストロが生きていること! このカリスマ指導者が亡くなったとき、キューバはいったいどんな崩壊を生きることになるのだろう。