2、3日前にさ、そいつが死んだじゃない? でもテレビの報道とか、どうでもいいからさ、知らないふりをしてたんだよ。
そしたら息子が、そいつをぜんぜん聴いたことないっていうからさ、深夜にYouTubeで一緒に聴きはじめたんだ。まずは「スローバラード」、そして「トランジスタ・ラジオ」をね。
80年代も90年代も、日本の歌や文学やなんだかんだに完全に背をむけていたので、実際、そこまで思い入れがあるわけじゃなかった。でも聴けば、なつかしい。聴けば、打たれる。なんという声の質、歌詞の強さ。
聴くうちに頭がしーんと澄み渡った。そいつ、死んだんだってさ。58歳で。でもそいつの声が残るって、いったいどういうことなんだろうね。死んだそいつの声だけは生きていてそれに気持ちが掻き立てられるって、いったいどういうことなのかな。