思潮社の海外詩文庫から、『フェルナンド・ペソア詩集』が発売された。
編者は友人の澤田直くん(立教大学)。日本の代表的サルトル研究者である彼は、他方ではロマンス諸語の詩に詳しく、カタロニア詩の翻訳もやっているし、イタリア語もよくできる。ポルトガルの20世紀を代表する詩人ペソアについても、ひさしい以前から取り組んできた。
この手軽な体裁で、「1880年代生まれの天才」のひとりであるペソアの詩が日本語で読めるようになったのは、本当によろこばしいことだ。
訳詩はほとんど澤田くん自身のものだが、ペソアの異名のひとつであるアルヴァロ・デ・カンポスの詩編のふたつは、ぼくの訳で収録されている。
いつしかぼくも、はじめてペソアを読んでから25年が過ぎた。故・出淵博先生のモダニズム研究のゼミで、ペソアについての発表をしたのを、よく覚えている。その後、シアトルの大学では、指導教官のひとりだった哲学者のミケル・ボルシュ=ジャコブセンが、90年代初めの一時期ペソアと多重人格の問題に強い関心を抱いていた。
ぼく自身のペソアの訳詩は『オムニフォン』に載せているので、これも興味がある人は、ぜひ見てください。