Thursday, 10 July 2008

野尻湖の花粉が教えるもの

7月9日の朝日新聞におもしろい記事があった。

地質学者・公文富士夫さん(信州大)の研究。野尻湖の湖底堆積物から花粉を調べ、過去7万年の気候変動を探るというもの。それによると、縄文へと移行する1万数千年前は特に変動が激しく、100年間で7度ほど気温が上昇したこともあったのだという。

一方、古生物学者の高橋啓一さん(琵琶湖博物館)は象の化石の専門家で、オホーツク海近くから出土した象の化石にナウマンゾウが含まれていることから、いまよりはるかに温暖な時代があったことがわかるそうだ。亜寒帯の針葉樹林に住むマンモスに対し、ナウマンゾウは温暖な落葉広葉樹林に住んだ。

マンモスはヒトに狩りつくされて絶滅した、とする説がむかしは有力だったが、いまはむしろ温暖化により生息環境を失ったという説が力を得ているらしい。武器らしい武器をもたない、しかも数がひどく少なかった人類には、マンモスを捕りつくすことなどとてもできなかったのではという気も、たしかにする。

いずれにせよ、過去1万年は気候の驚くべき安定期だった。21世紀が文明化(都市化)以後の人類が初めて直面する、本格的温暖化の時代になることは避けられないだろう。地球自体が準備するこの振れ幅に、ヒトの作為が加わって、これからの地表はどうなっていくのか。地表で何が起ころうと意に介さない、深海生物の時代が、未来の生命圏の避けがたい運命なのかもしれない。