暑い一日でやることはすごくたくさんあるのだが、終了間際の展覧会「アール・ブリュット/交差する魂」を見に汐留の松下電工のミュージアムに。
駅で驚く。へえ、汐留って、こうなってたんだ。すごい、でも感動はない。というか、20世紀に置いてくればそれでよかったようなかたちの都市計画。潜在的にゆたかな海岸を、わざわざ人工的な岩石の不毛でおおっているような。美もなぐさめも気持ちよさもない。
それはともかく、この美術展はやはりすごかった。アウトサイダー・アートという呼び方の妥当性は考えてみる必要があるが、それぞれにまぎれもなく独自性を刻印されている。なかでも文字関係の作品に、つい過剰に反応してしまうのは、ぼく自身の趣味。
喜舎場盛也の漢字への執着、戸來貴規の誰にも読めない日記、富塚純光のふしぎな新聞紙絵画。どれも、真似したくなる。文字が輝き踊っている。
それから銀座まで歩いて、大平奨さんの絵画展(なびす画廊)。日仏学院のひげのおじさん、といえば、わかる人も多いだろう。いつも催し物があるたびにお世話になっているが、彼の画家としての側面は見たことがなかった。すばらしい大作が並んでいる。ぼんやり浮かんだ人物の肖像の上に、おびただしい環が浮遊する。どれも色がいい。筆とスポンジで描いていったそうだ。学院の激務をこなしながら、これだけの大きな作品を毎月のように仕上げてゆくとは、ほんとうに感服。
音楽もいいけど、絵もいいなあ、やっぱり。
それから研究室に戻り、期末試験の採点。惨憺たるできばえで、暗澹。大学の語学教育、どうにかしたい。しかも語学部分だけじゃなくて。今回はみんなの授業中の発表に基づいて簡単な地理クイズ部門を作ったのだが、「1968年に冬季オリンピックを開催したフランスの都市は?」という問題に「タヒチ」と答えたり、「ハイチのヴードゥーの原型に近い宗教をもつ西アフリカの国は?」に対して「ベトナム」と書いたりするのは、どうか。あ、ベナンのベの字でまちがえたのか。それでも、人の発表を、もう少し聞けよ。
文化的知識を離れて語学も何もないが、そもそもまるで興味のない地域・主題・言語を学べといっても、それはむりだろう、たしかに。語学は希望者だけにするか。しかし、世界といえば自分の生活圏、知識といえば商品知識しか求めない純粋消費者的精神たちが、いったい何を思って大学に通うのか。