Saturday 21 June 2008

DC研報告

夏至、おめでとう。冬至と並んで、一年のもっとも重要な日。明日からは太陽の力が弱まるので、われわれはそれを励ますために毎日、祈り、歌い、踊らなくてはなりません。少なくとも毎日、朝日にご挨拶しよう、晴れているかぎり。

きょうはひさびさに、アキバでディジタルコンテンツ学研究会。DC系の学生のみならず外部からのお客さんも4名。サイバー大学の阿部和広先生の、きわめて充実したお話をうかがうことができた。

阿部さんはすでに20年以上にわたってSmalltalkを、ついでSqueakを使ってきた、日本における第一人者。コンピュータ・テクノロジーをめぐる「思想」が、はっきりと感じられる方だ。

http://wiki.squeak.org/squeak/1687

お話はコンピュータ開発の歴史にはじまった。Memex (memory extention)を構想したヴァンヴァー・ブッシュ、マウスを発明したダグラス・エンゲルバート、スケッチパッドのアイヴァン・サザーランド、ロゴのシーモア・パパートらの足跡を見てゆく。中でも最重要なのは、ダイナブックを構想したアラン・ケイ。

コンピュータはメディアであり、しかもどんなメディアも模倣できる、存在しないものすら模倣できるメディアである。すなわちメタメディアと呼ぶにふさわしい。そんなアラン・ケイの認識のすごさに、阿部さんのお話によって目を開かれた。

後半は「100ドルラップトップ」として知られるOne Laptop Per Childプロジェクトの紹介。阿部さんはこの運動にも、深く関わっている。この計画によって流通する第2世代のXOは、見た目からしてアラン・ケイのダイナブックの実現、そのもの。思わず震えるほどの先見性と、地球的規模の社会的正義に対するヴィジョンだ。

最後に阿部さん自身の開発した「世界聴診器」World Stethoscopeのデモンストレーション。これでみんな大満足。しばらく遊ばせてもらって、お開きに。みんなでお昼を食べに行った。

いろいろな発想がぶつかりあうことによって、ヒトの世界把握そのものを深く変えてきたコンピュータの進化を、阿部さんはカンブリア紀の生物進化になぞらえた。理由はわからないが、ある方向に進み、それによってヒトという「種」と世界の関係が根源的に変わってくるということだろう。そしてその進化上のドリフトには、われわれもまた参加できる。

われわれはつねに世界の明日に関して(どんなに小さくても)決定権をもつ。

深く充実した土曜の午前だった。