Monday, 2 June 2008

「風の旅人」

6月1日発売の「風の旅人」32号に、連載エッセー「斜線の旅」の第17回として「桜、花、はじまり、小さな光」を書きました。

毎年、春になると氾濫する「桜写真」にまっこうから闘いを挑むような、新正卓さんのピンホール・カメラによる桜写真に触発されて綴った文章です。

「斜線の旅」連載も、いつのまにか17回。年6回ですから、次号で3年。もちろん、一冊の本にまとめるつもりですが、どんなかたちにしようか。ともあれ、これまでの歩みをまとめておきます。「風の旅人」16号(2005年)から。

1「フィジーの夕方」
2「湖とハリケーン」
3「ヌクアロファ」
4「最後の木の島」
5「オタゴ半島への旅」
6「タンガタ・フェヌア」
7「青森ノート」
8「見えないけれどそこにいる、かれら」
9「世界写真について」
10「ほら、まるで生きているみたいに死んでいる」
11「ここがもし聖地でなければどこが」
12「もしアメリカがなかったら、いまは」
13「モーテルと地図帳」
14「金沢で会う寒山、拾得」
15「島と森、鳥と果実」
16「その島へ、この海を越えて」
17「桜、花、はじまり、小さな光」

そしていまは次の号の作業中。おもしろいもので、雑誌連載では、「どうして自分がこんなことを書くのか」と思うような主題が浮上してきます。それはもちろん、そのつどのしめきり前後の苦闘のせいでもあり、編集者との対話のせいでもあり、まったくの運でもあります。

人は自分で文章を書いている気になるけれど、じつは「自分の力」なんて半分もないくらい。それがあるから、やはり雑誌という媒体はおもしろいし、広告なく運営している「風の旅人」というこの特異な雑誌に、前田英樹さん、酒井健さん、田口ランディさんらとともに連載をもたせていただいていることのふしぎさを、しばしば感じます。

この雑誌がつづくかぎり、この連載もつづけたい。つづけないかぎり、けっして出てこない何かが、世界のいたるところに隠されているのですから!