Sunday, 25 November 2007

秋の青空、昼も夜も

いま、生明祭が進行中。明治大学生田キャンパス(理工学部・農学部)の学園祭だ。ぼくは学生部委員なので、関連の仕事はまず「お祓い」から! 木曜日、キャンパス内の生田神社に神主さんを呼んで、年に一度のお祓いをする。神社、ついで動物慰霊碑、ついで体育館(神棚のある柔道場)。神社は小さなものだが、すでに葉が色を変えはじめた木々の下で神主さんのコトバを聴きつつ空を見上げると、青い青い青空。

翌日、金曜日からが本番で、キャンパスの巡回業務。部活の発表でも模擬店でも、語学の教室では眠い顔をしているみんなが、やたら元気だ。巡回で楽しいのは農学部エリア。農場でとれた野菜類ばかりか、本格的なりんごやラ・フランスなんかも売られていて、近くの住民の人たちが殺到している。これほど確実な「地域貢献」もない! 最高の人気は花卉園芸部が作る花や観葉植物。去年、ベスト展示に選ばれたが、これはどこの花屋さんにも負けないくらいで、しかも安い。このときちょっと目をつけておいたサボテンの大きな鉢、あとで買いに行きました。研究室のテーブルに、猫のようにすわらせてみた。

土曜日は巡回からはずしてもらい、夕方から早稲田大学英語英文学会での講演。あいにく、尊敬する翻訳家・若島正さんの講演と完全にバッティングし、『ロリータ』の名訳に魅了された人たちはそちらに流れたようだ。ぼくだって、そっちに行きたかった! これでこちらの聴衆はかなり減ったが、かえってリラックスした、親密な雰囲気でできてよかった。来てくれたみんな、終わってから話もできなくてごめん。またゆっくり。

講演のタイトルは『翻訳=世界=文学』、サブタイトルが「ヘレン・ケラー、バベル、パンの名前」。感覚を遮断されたヘレン・ケラーにとっての言語の力、旧約聖書のバベル神話への疑問、そしてマサチューセッツのシリア系移民にとっての翻訳不可能なパンの名前をめぐる話。これまでにぼくが人前でした話の中では、たぶんいちばん重要なもの。それから「翻訳世界文学」の実例としてアティーク・ラヒーミー『灰と土』、チママンダ・アディーチェ『アメリカにいる、きみ』、シルヴィー・ジェルマン『マグヌス』の3冊の紹介。終わって外に出ると、大隈講堂の真上、快晴の夜の青空に満月。あまりに絵になる風景だった。並木道と講堂に、絶妙な角度をつけている。

これでひとつ、気持ちの上で大きな仕事が片付き、次は年末、大阪での英文学会、若島さんたちとの「コスモポリタニズム」をめぐるシンポジウムが待っている。あとは遅れている原稿いくつかと、大幅に遅れている翻訳。関係者のみなさん、すみません。今年はあまりに早く終わろうとしているからびっくりしているが、今日もこれから生田へ。巡回、それから顔を見せる卒業生のやつらと、これも農学部名物のジンギスカンでも食べながら乾杯しようか。