10日(土曜日)、新宿の紀伊國屋ホールでの「書物復権2007」第2回「大学の知、街の知」というパネルに参加。
http://www.kinokuniya.co.jp/01f/event/shinjukuseminar.htm
佐藤良明さん、坪内祐三さんと、1時間40分ほど、<現在>の<教養>について議論した。
ぼくの話は、教養一般なんてどうでもいい、教養とは個人的な追求にすぎない、そして人々の<空間的配置>を決めるような教養、<商品知識>に還元されるような教養にだけは断固反対しなくてはならない、というものだったが、そのあとでアメリカの大学の思い出を話しはじめたあたりで脱線。そのまま立ち直れず、聞いていた人にとっては「?」になってしまったかもしれない。ごめんなさい。
それでもいくつか、興味深い論点を出せたと思う。またアメリカ60年代の対抗文化がしめそうとしたものこそ、現在でももっとも根源的な問題なのだという三人の共通の了解も、なんとなく伝わったのではないかと思った。聴きにきてくれた友人たちには、ありがとう。
佐藤さんはぼくがもっとも敬愛するアメリカ文学者。稀代の読書家で同時代の歴史家である坪内さんは初対面だったが、同い年で、70年代中期の「宝島」の愛読者だった点をはじめ、共通する経験がたくさんある。ぼくらはたぶん70年代に芽生えたある種の別の文化への期待を核にしてその後ずっと生きてきた世代で、この期待のイメージ(消費社会と序列化・階層化の文化に対する抵抗の気持ち)だけは、死ぬまで持ち続けるだろう。
限られた時間で言葉にすることのできたことはごくわずかだったが、また機会があれば、佐藤さんや坪内さんとの対話を続けてゆきたい。お世話になったみすず書房や紀伊國屋書店をはじめとする「書物復権」8社のみなさま、ありがとうございました。「本」が担うものは不滅です。良い本との孤独な、沈黙の対話以外に、われわれの生に道をしめしてくれるものはありません。これからも書物の生産・流通・受容のそれぞれの現場で、がんばってやっていきましょう!