Tuesday, 17 January 2012

松浦寿輝「波打ち際に生きる」

東大文学部で松浦寿輝さんの退官記念講演「波打ち際に生きる 研究と創作のはざまで」を聞く。人生のこの段階で、あえて文筆専業の道を選ぶ覚悟に感銘をうける。つねに波打ち際に身を置いて、その位置から書いてきた彼の圧倒的な文業が、これからまったく別のフェイズに移行するのか。戦慄。

その波打ち際の魅惑の始まりが、房総半島の「ほた」「とみうら」という漢字でどう書くのかもわからない地名だったという冒頭近くのエピソードに、ついにっこり。あの巨体の松浦さんが、そのときばかりは半ズボンに開襟シャツの小学生に見えた。波を呆然と見つめ足元の崩れる砂を楽しむ、でっかい小学生に見えた。