人間の歌のおもしろさは、文化や言語や曲のジャンルがちがっても、いい歌手は一瞬でわかるということ。
地球にこれだけ人がいるのだから、めぐりあえる歌手なんて、すべてのすばらしい歌手のごくごくごくごく一握りでしかないだろう。
いちばん最近、飛び上がるほど驚いたのが、中国の民謡歌手ゴン・リンナ。ゴンは「龍」の下に「井」という一文字、リンは「琳」でナは女偏に「那」の字。
まったく知らずに聴きはじめて、最初の「走西口」(陜北民歌)にガッツンとやられた。すごい。思わず目が丸くなり、涙が出そうになる。
「西の峠を越えながら」といった意味らしいが、いったいなんという不可解な情感だろう。引き裂かれる思いだろう。これを、ニューメキシコのプエブロにもってゆき、村人たちとともに、岩山の上で大音響で聴いてみたいもの。