Wednesday, 31 October 2007

サンドラールへの追補

ぼくがサンドラールを好きなわけ、3つばかり。

(1)どこかで彼は書いていた、「サティはトナカイの肉が好きだった」と。人が人を語るにはいろんなやり方があるけれど、ひとことで人(他人)を表すとき、その人(自分)の傾向が現れる。ぼくにとっては、これでサティが身近になった。それはブレーズの磁力のせい。

(2)サンドラールが自分の犬(ハウンド+スパニエル系の雑種?)を残された左手で撫でている写真が、何枚かある。あのいかつい老人には、あまり似合わない可憐な犬。でも彼はその犬に「ヴァゴン=リ」という名前をつけていた。意味は「寝台車」。彼以外、どこのだれがそんな名前を犬につけるだろう!

(3)サンドラールはいつも左手で手紙を書き、最後にこう書き添えた。De ma main amie(私の、友情の手による)。小説はたぶんレミントンのタイプライターで打ち出した。それから手紙やはがきを手で書いた。このことはヘンリー・ミラーが書き残している。ヘンリーはブレーズを心から尊敬していて、彼が長いパリ生活ではじめて会ったフランスの作家がサンドラール、最後に(パリを離れる日に)偶然会ったのも彼だった、という。

土曜日、今福さんの話の途中でぼくがいちど口をはさんだのは、サンドラールとタルシーラ・ド・アマラルの誕生日がおなじだということ。確認したら、やっぱりそうだった。二人とも9月1日、タルシーラがひとつ年上。ふたりは大西洋をはさんだ姉弟だった。