Sunday, 2 May 2010

聴覚の先行性(原一弘に)


人間が外部とのあいだにむすぶ関係の中では、聴覚がもっとも先行している。

「われわれはその日に先立つ命のなかで、ただひたすら聞くだけの聴覚にすぎなかったのに、生誕とともに音を出すものとなる」(パスカル・キニャール『さまよえる影』27ページ)。

胎児は、明るい暗闇の中で浮かんでいる。羊水は、まだ外部としては意識されない。母体から外に出て、みずから音を出す存在になったとき、自分がはじまる。

おもしろいねえ。