Saturday, 1 May 2010

佐々木愛「毎日のスケッチ」

麻布十番のgm tenで開催中の佐々木愛「毎日のスケッチ」を見る。愛さんが毎日、絵を描き足してゆき、それをスライドショーで上映する。1枚あたり10秒程度で、きょうの時点で33枚(たぶん)。彼女の想像力の基本素材である植物、山並み、雪の結晶、鳥などが、あのなんともやさしくかつ力強い線と色彩をもって、その場に出現する。ウミガメもかわいかった! 


色彩とは全面的な体験でつねに視野の全面に立ち現われてくるものだが、それがいったん白に還元されて、ところどころに火を灯すように、画面の焦点の部分にだけ彩色される絵が、なんともはかなく、美しい。33枚見たとしても5分半。それで確実に心が変わるのだから、これは見るべし。絵によって自然との関係に目覚めるのも、重要な経験だ。


終わってからオフィスのほうにゆくと、本棚にエイミー・ベンダー『わがままなやつら』が並べられていた!しかも工藤千愛子さんがそれを愛読してくれたというのが、うれしかった。彼女のお気に入りは「アイロン頭」だそうだ。「飢饉」「マザーファッカー」とともに、この短編集の中の悲痛な名作のひとつ。訳者なんて何者でもないけれど、それでも。


「毎日のスケッチ」は5月9日まで。どこかの時点で、もういちど行こう。みなさんにも心からお勧めしたいです。そして麻布十番の商店街、おばあさんがやっているおでん屋さんになかなか入れないので、こんどは思い切って入ってみたい。