後期の授業がはじまった。1,2年生むけの「作文」のために、新聞数紙を買い込む。毎週600字を書いてくるので、その長さの感触をつかむために、各紙のコラムをまずコピーして配る。毎日の「余禄」、東京の「筆洗」、読売の「編集手帳」。毎日がやや長くて700字程度。あとはだいたい600字ちょっとだ。
どれも起承転結がはっきりしていて、組み立てが見やすいので助かる。もちろん学生たちに出す課題は、新聞のコラムとはぜんぜんちがう。第1回の課題として出したのは「他人としての私」。三人称で自分を描写する試みだ。
それはともかく。きょうの新聞で、最高におもしろかった記事二つ。
まず、東京新聞の「シカから身を守る<とげ>」。奈良公園のイラクサが、シカに食べられないように毒をもつ棘を進化させてきたという話。奈良の有名なシカは1200年前、鹿島神宮から連れてこられたらしく、この1200年間にシカに食われないための防衛反応として、棘の数を通常の50倍に増やしたのだという。奈良女子大の佐藤宏明(昆虫生態学)グループの研究。1200年でそこまで変わるのか! じつに興味深い。
もうひとつは読売新聞から「SFみたい巨大ダンゴムシ」。新江ノ島水族館で展示されている深海生物大王具足虫は体長35センチ、成長すると45センチになるそうだ。アメリカ東海岸の水深800メートルの海底で採取された。おもしろかったのは45センチを「猫や子犬ほどの大きさになるという」と表現していること。するとこの海底のあさり屋をペットとして飼いたい気にもなるし、なんだか楽しい。
こうした知識は無用といえば無用。でもぼくにはいま、いちばんおもしろい。無用の知識なくして何の知識。自然史ばんざい!