Thursday, 14 December 2017

たまには日本語文の引用

最近もっとも衝撃をうけた一節。

「夫は大ケガをするし、猟もない、子供に教育を受けさせたい、と私たちは四月を前に旭川に帰ることに決めました。養っていた子グマはすっかり大きくなり、 連れて帰れないので、旭川の親せきや奈井江の町の人を呼んでクマ送りをすることにしました。この子グマはとても利口で、人間の言うことすることはなんでも わかるだけでなく、自分も人間の子供だと思っていたようで、することなすこと人間の子供そのままなのです。

 子供たちと歩く時は、後ろ足二本で立って並んで歩きますし、ソリ遊びの時も、ソリの後ろに乗り込んで、両手で前の子供につかまっています。外遊びから 帰ってきた子供たちが『寒い、寒い』と炉の火に手をかざしてあたっていると、自分も間に座って前足をかざしてあたるのです。こうして座ると、頭の高さも子 供たちと同じぐらいで、幅だけが広いのです。

 私も子供たちのひとりのように思い、子供たちも、とてもかわいがっていたので、クマ送りで送った時は悲しくて悲しくて泣いてばかり。肉も食べる気になれませんでした。この子グマのことは、いまも忘れられません。」

砂沢クラ『ク スクップ オルシペ』