連休、沖縄でふたつの学会に参加しました。いずれも会場は名護市の名桜大学。ゲイリー・スナイダー研究者の山里勝己さんが学長を務めている、小高い丘の上のきれいなキャンパスです。
まずISLE-EA (International Symposium on Literature and the Environment in East Asia)。韓国、台湾、日本をはじめとする東アジアの環境文学研究者が隔年で集まる、重要な国際シンポジウムです。今年のテーマは "Unsettling Boundaries: Nature, Technology, Art"でした。上記の国のみならず、カナダ、アメリカ、オーストラリアなどからも参加者があり、充実したパネルがいくつも組まれました。
ぼくは初日に基調講演。"On the Re-wilding Coast: Reflections after 11 March, 2011" と題して、社会と自然の関係を全面的に問い直す機会となった東日本大震災と原発事故後の状況について話しました。畠山直哉さん、赤阪友昭さん、片桐功敦さんから、すばらしい写真をお借りして、ぼく自身が撮影した動画や写真とともに、東北の土地で考えてきたことを伝えようと試みました。
二日目の基調講演はアメリカで活躍するドイツ人批評家でUCLA教授のUrsula Heiseさん。エコクリティシズムをリードする、第一人者です。
思えば1997年、メキシコのプエルト・バジャルタで開催されたACLA(アメリカ比較文学会) で、エコクリティシズムをめぐるはじめてのセッションが組まれたのでした。組織したのはパトリック・マーフィー。上記のハイザ、動物をめぐる理論で知られるキャリー・ウルフ、ぼく、みんなこの分野にとりくみはじめたばかりのころでした。ぼくがゲイリー・スナイダーとヤキ族のエスノポエティクスについて発表したのは、このときでした。
シンポジウムが終わり、日曜日の午後は辺野古へのフィールド・トリップ。あまりに美しい海。基地の建設はとりかえしのつかない破壊をもたらしますが、この海岸で改めて、アメリカと日本との関係、ヤマトと沖縄の関係を、考えないわけにはいきませんでした。すぐお隣の台湾、韓国のみなさんにも、この海の光が、強い印象を与えたようです。
海外からのみなさんと別れて、月曜日はASLE-JAPAN (文学・環境学会)の第20回大会。創立20年を迎えて、大きな転換期にさしかかっていることを再確認しました。まず文学研究を、さらに広い環境人文学、そしてアートへと開いてゆくこと。そして、ともすれば英語圏研究者主体になりがちな研究共同体に、日本文学、他の外国語文学のみなさんの参加を促し、アジア・太平洋圏や北欧(環境人文学の先進地域です)との交流を作り出すこと。
ぼくとしては、写真家、映像作家、造形作家、音楽家、舞踊家、いろいろなかたちで表現にとりくむ人たちにもぜひ参加していただき、文学・人文学研究との接合を試みていきたいと考えています。
興味がある方は、「学会」という名前を敬遠せずに、ぜひお気軽にご参加ください。