Sunday, 9 November 2014

午前3時の川

金曜日、下北沢B&Bでの赤阪友昭・小島ケイタニーラブのイベント。前半は主に赤阪さんが月の話をし、ケイタニーが歌い、後半はアラスカの話になって、ぼくも参加しました。

開始前に「詩の朗読を」といわれ、何ももっていなかったので隣のTag Cafeに行ってあわてて書いたのが次の詩。でも現実の映像が頭の中にあってそれをなぞっただけですから、あっというまに書けました。途中でケイタニーのギターの伴奏が入り、そのまま「フォークダンス」の合唱でエンディング。楽しい晩でした。またいつかアラスカに行きたい。

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「午前3時の川」


明け方にきみはやってきた
6月の森の夜明けだ
午前3時にやって来たんだ
川が海に流れ出るその場所へ
川だって? そう冷たい水の川だ
黒い岩の岸辺にむかって
激しく水が流れ落ちる
しびれるほど冷たい水だ
なんというさわやかな場所だろう
しぶきを浴びながらぼくは待った
岩のようにうずくまって
本当には暗くならない夜の底を
鮭たちが途切れめなく遡ってゆく
水よりも多い魚の群れ、川底が見えない
流れ落ちる水よりも速く遡る鮭たちの肉だ
ウィスキーよりも濃い色をしたゆたかな鉄の水が
森のあらゆる気配を溶かしている
ぼくは待っていた
長いあいだ待っていた
そこにきみが来たんだ
何も気にせず、何も恐れず
流れの対岸に森からふと現われて
そしてきみの漁がはじまった
川岸の黒い岩に足場をたしかめて
若いお尻を高くあげて顔を水につっこむ
ほら!ほら!大きな鮭をくわえた
身を強くふるわせる鮭をたちまち水に落とした
でもきみは挫けない、鮭の流れは途切れない
ほら!ほら!また鮭をくわえた
尾を強く打つ鮭をきみはしっかり嚙み
両腕でかかえこんで大きな魚を捕まえる
それからのっそり森に入ってゆく
濃い森陰で食べるために
その赤い肉を食べるために
さわやかな肉を食べるために
ぼくは知っている、きみはその頭と
ぎっしりと腹につまったつぶやかな卵しか食べないことを
きっかり7分後、きみはまた出てきて
また褐色の冷たい流れに頭をつっこむ
鮭たちのパニック、噴水のように跳ねる魚たち
きみはのんびりと夢中になってきみの食事を準備する
ブラック・ベア、黒熊、若い娘、黒い毛の
森の娘、アラスカの川の、
遡上する鮭たちを捕えて
その骨を森に返す
それがきみの食事
それがきみの仕事
ほら、空が明るくなった
ほら、森が目を覚ます
きみの食事の贅沢な残り物を狙って
鷲たちが空を舞う
からすとかもめがじっと待つ
アラスカの朝の森だ
森と海のあいだ
午前3時の川