「私個人としては、東北がどんなに低開発と呼ばれようとも、一次産業で立っていける場所にしたいのです。今回被災した地域は、『ケガチ』と呼ばれる飢饉の頻発地帯です。そこに暮らす人は『ケガヅ』と言いますが、いずれにしても、文字どおり『ケ』、つまり日常の、ことに食料が欠けがちな場所なのです。地震も津波も冷害もある。陸で生きるのも浜で生きるのも過酷な場所です。過去の歴史のなかでどれほど津波が起きてきたのか、私たちはあらためて知りましたが、それでも漁師が漁をやめたことはありませんでした。過酷な自然に対峙しながら、ここまで続いてきたのです」
(赤坂憲雄・小熊英二・山内明美『「東北」再生』イースト・プレス)
山内さんの巻末のエッセー「最後の場所(ケガヅ)からの思想」も必読。