2011年2月14日月曜日

イチジクとコバチ

12日(土)の日経の夕刊のコラム。新聞記事でこんなに感動することは年に一度、というくらい感動した。イチジクとイチジクコバチの1億年の共進化を研究している、蘇智慧さんの成果から。筆者は特別編集委員の足立則夫さん。

引用する。

「イチジクは、中南米やアフリカ、東南アジアに計800種、日本では16種に及ぶ。1種ごとに受粉を担当するイチジクコバチの種も異なる。

 コバチは全長1〜2ミリ。メスのコバチは、胸の脇のポケットに雄花の花粉を詰め、イチジクの花嚢の狭いすき間から、羽や触覚を失いながらも必死に入り込む。雌花に受粉し種子作りに貢献する。自らも花嚢の中で産卵、孵化した幼虫は虫こぶの中で育つ。

 成虫になると、まずオスが虫こぶから出る。メスの虫こぶを開けてやり、交配する。メスはオスの手を借りてイチジクの雄花の花粉を花粉ポケットに詰め込み、オスが再び開けてくれる花嚢の穴から、他の花嚢を目指して飛び立つ。オスは花嚢の中だけで生涯を終える。

 ごく一部に花粉を持たずに花嚢に入り込む詐欺コバチもいる。その場合、イチジクの樹木が養分を送るのをやめ、花嚢を枯死させてしまう。」

 なんと驚くべきコミュニケーション、契約。ヒトの言語的コミュニケーションとはいわば超速記。ヒトと犬のような馴染みの動物種のあいだの視覚的・音声的コミュニケーションでも、速記。それに対して、まったく途方もない時間的オーダーで洗練されてきたイチジクとコバチのような異種間コミュニケーションの、この苛烈なまでのまちがいのなさはどうだ。

すごいなあ。今日のニュース、この1年、10年の人間社会の出来事を報道してくれることはもちろん必要だが、1000万年、1億年の自然界のニュースほどわくわくさせられるものはないだろう。