2011年2月1日火曜日

『斜線の旅』、読売文学賞

ぼくの本『斜線の旅』(インスクリプト)が、第62回読売文学賞(随筆・紀行賞)を受賞しました。

2005年からの足掛け5年にわたる連載を好き勝手な題材とスタイルで思うがままに書かせてくださった「風の旅人」編集長の佐伯剛さん、その連載を美しい一冊にしてくださったインスクリプトの丸山哲郎さん、そしてこの本を愛読してくださったすべての既知および未知の友人たちに、心から感謝します。ありがとうございました。

とりわけうれしいのは、この部門の昨年の受賞作が堀江敏幸さんの『正弦曲線』だということ、そして今年の「研究・翻訳賞」が野崎歓さんの『異邦の香り』だということ。二人の友人たちと、こんなかたちでそれぞれの仕事の一区切りを祝うことができるのは、ほんとうに幸運なことです。

そして二人の名前を出すと、もう一人の親友のことを思い出さずにはいられません。一昨年の夏に亡くなった編集者の津田新吾。彼のお別れの会で彼を送り出す言葉を述べたのが、野崎さん、堀江さん、ぼくでした。送り出した、たしかに、でもどこにむかって? その後もぼくらはそれぞれがそれぞれの本の島に住み、島々は勝手に可視不可視の火山活動を続けています。その島と島のあいだの海のどこかで、ジュゴンのように、ジュゴンとして、彼はいまもぷかぷかと浮かびまどろんでいるような気がします。

本は物として存在するけれど、その本質は想像的なもの。そして想像の世界には、時間の隔てもなく空間の分離もありません。だったらジュゴンのためにわざと熱帯の海岸に本を置き忘れてくるのも、意味のないことではないでしょう。ジュゴンは永遠にまどろみながら、砂の上の本を、文字ではなく気配で読みとってくれるかもしれません。餌だと思って食べてしまうのでなければ!

斜線の旅は続きます。