Saturday, 23 June 2018

20年後

ぼくが翻訳したリオタール『こどもたちに語るポストモダン』(ちくま学芸文庫)の「訳者あとがき」には1998年6月22日の日付がありました。ちょうど20年前、書いた場所はシアトル。今日、読み返してみると、そのころ考えていたことを思い出すと同時に、その文がしめしている方向性を充分に追求してこなかったことがはっきりわかり、反省を強いられました。

ある主題は、たぶん数年のサイクルで自分の中でくりかえし回帰しているのですが、文章としてかたちにしておかないと結局は忘れられるばかりだし、先に進むこともない。もう一度初心に戻り、20年前から再出発したい気分です。

その年の4月21日、リオタールはパリで亡くなりました。つまり今年は没後20年。フランスでは、あるいはフランス研究の世界では、何か行事があったのでしょうか。その有無にはかかわらず、彼が遺した何冊かの本を新たに繙き、いろいろ考えてみたいと思います。そういえばぼくにとってのもうひとりの重要人物オクタビオ・パスも、今年が没後20年の節目の年です。

リオタールのこの小さな本はぼくの最初の訳書で、1986年の秋に出版されました。まだ大学院生で、何の方向性も見えていなかったころの翻訳。その後、考えてきたことをもって、改めて注釈をつけてみるのも一興かもしれません。