文学関係の学会としては世界最大の Modern Language Associationの年次大会、終了しました。今年はフィラデルフィアで開催。参加者は1万人ともいわれ、ものすごい数のパネルが木曜から日曜までびっしり行われます。古い友人たちとの情報交換や、文学・文化研究の新刊書を手にとってみるのにもいい機会。また大学のポジションに応募した人たちにとっては面接が行われるときでもあり、緊張した面持ちの若手の研究者がたくさん会場を行き交っています。
ぼくが参加したパネルは 1月6日(金)午後に行われました。"Nature and Disaster in the Contemporary Japanese Cultural Imagination" と題されたもので、ぼく、Alex Bates、Kathryn Hemmann、Douglas Slaymaker の4名が発表し、質疑応答がそれにつづきました。
ぼくの発表タイトルは "What About Animals? In the Wake of Nuclear Disaster in Fukushima" で、これまでに他のところでも話してきた古川日出男、木村友祐の震災後の作品を扱っていますが、時間が限られていることもあって、特に古川さんの戯曲『冬眠する熊に添い寝してごらん』に焦点を絞って話しました。途方もないユーモアをもって、明治以後の日本の歴史を鋭く問う傑作です。
奇しくもこのパネルの番号が「311」。まったくの偶然か、運営委員会の意図かは、わかりません。まもなく丸6年が経過しようとしているのに、原発事故を招いた<近代>の論理に対する反省のまるでないわれわれの社会の問題点を、これからも文学作品を手がかりとして考えてゆきたいと思います。