シアトルの大学院ゼミで、昨日は本谷有希子の短篇「マゴッチギャオの夜、いつも通り」を読みました。一度目はみんなで段落ごとに輪読(朗読)。二度目もそれをくりかえしつつ、コメントとディスカッションをはさんでいくかたちで進めました。
議論白熱。いろいろなポイントのある非常におもしろい作品です。人間世界に埋め込まれた猿山という施設、そこにチンパンジー社会から追放された(人間に育てられその知能があまりに人間に近づきすぎたため)ひとりが投げ込まれ、それから事件が起こり、驚愕の奇蹟が起こります。
種の知能と語彙とか、イルカの笑顔問題とか、語り手としてのマゴッチギャオは本当は頭が良いのか本当に悪いのかとか、ヒトの度し難い残虐さとか、次々にたくさんの論点が上げらます。大変よく書けた作品ですが、「ここはちょっと失敗(=論理的破綻)かな」という部分も見えてきます。
大学院生のみんなの日本語力に脱帽。アメリカ社会自体が中国むきに視線をシフトしていて、日本語をやっても特に実利につながらなくなった時代だからこそ、日本文学研究に本気で力を注ぐ学生だけがむしろ残るのかも。
今学期中、かれらと十分につきあって、できるかぎりのことは教えてあげたいと思っています。